第95話

地に落ちない白鳥
7,207
2020/09/12 04:56

『今日の決勝___勝ったのは白鳥沢だ。』


『っ……………また負けた』


昼言っていた烏養さんの言葉と、帰宅すると悔しそうに顔を歪める兄に掛けられた言葉が、頭をぐるぐると回る。









あなた「__白鳥沢…」


堅治とはまた違う、腐れ縁ではなく割と仲の良かった幼馴染の顔が浮かんだ。


『あなたっ!エース・・・である俺が今日も!試合でいっぱいスパイク決めるから見てろよっ』

『俺___白鳥沢行く…!そんでまたっ、エースになる!!』


最後に会ったのは、中1の頃だっけ…

幼稚園が同じで、小学校は5年生の頃向こうが引っ越して行った。そして中1のときにスーパーでばったり会って、連絡先を交換した。 それから時々連絡を取りあっていたが、今は年に何度か。














コンコン、と不意に部屋にノック音が響いた。


母「あなた?久しぶりに外食にでも行かない?貴大も行くって言ってるし……」


なんでこんな時に__そう思った、けど。

落ち込んで、薄暗い部屋に引きこもる子に、気分転換でもさせようとしたのだろう。その母の優しさを、断ることはできない。

それに…………

『もう一度、あそこへ行く!』


澤村さんも、皆も、昨日のことを引きづっていない。もちろん悔しさは残っているはず。

でももう今はきっと、”春高”に行くことしか、”オレンジコート”で全国の強者達と戦うことしか、考えていない____



あなた「…行く!」

元気に振る舞えたか分からないけど、できるだけ元気に、明るく、そう声を発した。

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