一通り今日の日程が終わり今から自主練、というタイミングで山口くんに声をかけられた。
できるよ!絶対!と言ったが、正直わからない。
呼び出されたのと、相談も兼ねて取り敢えず黒尾さんのところに向かった。
────ドンマイ
────落とすくらいならアゲないで下さい!!!
第3体育館近くに行くと、何やら声が聞こえた。
陰からちらりと覗くと、月島くん、木兎さん、黒尾さん、赤葦さんがみえた。
よく聞こえなかったが、黒尾さんが得意の挑発顔で何か言うと、月島くんは大股で体育館に入っていった。
リエーフのレシーブ練を手伝って欲しいと言われたので、その代わりに月島くんを変えて欲しいと頼んだ。
ボールを山なりにふわりと投げる。
ポン、と返ってきた。
多少荒いところもあるが、流石音駒。
たった数ヶ月でこのレシーブか。どんな練習してるんだろ……。
黒尾さんがなかなかキツそうなワンマンをリエーフにやらせるので、このくらいやっていいのかなと遠めにやってみると、リエーフは直ぐに床と一体化した。
勢いよく放たれた言葉とは裏腹に、また直ぐにへばったリエーフだった。
いや。黒尾さんはそう言って私の方に向き直り、真っ直ぐ私の目を見つめた。
ま、なんかあったら俺んとこ来いよ。とだけ言って月島くんたちの方に行ってしまった。
顔にでてる、って……。
うわ…、
確かに、西谷先輩のあの笑顔も、仕草も、プレーも。
そして「潔子さんっ!!」と走って行く姿も。
先輩は潔子さんが好きなのに。
叶わない恋なのに。
たまに期待してしまう自分が嫌だ。
『あんま溜めんなよ?』
いっそのこと、突き放してもらおうか。なんて…
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。