昨日の大雨と雷の嵐は嘘だったかのような晴天。
カーテンの隙間から差し込む日光が眩しい。
3人分の布団をたたみ、端に寄せる。
スマホの画面とにらめっこする夜久さんに、眠い目をこすりながら話しかける。
ほらと画面をこちらに向けて、夜久さんの指の先には今日の日付と『研磨 通話着信 1:16 10分16秒』の文字が表示されている。
そういうことか、などと会話をしていると部屋のドアが勢いよく開いた。
それはダメと声を揃え、リビングに向かう。
おはよう、と言ってリビングに入ると何やらドタバタとしている煌さんが目に入った。
一つため息をつき、ハイハイと返事をした夜久さんはお父さん、お母さん、お兄ちゃん、それから私、と順番に丁寧にお礼を言ってくれた。
荷物を取りに行く夜久さんに着いていく。
2人の廊下を歩く足音と、煌さんたちの声が聞こえる。
ポンポンと頭を優しく撫でられる。
くすぐったいような心地良いような、優しさに包まれるような感覚に、顔がほころぶ。
なんだよその顔、とつられて夜久さんも微笑む。
ああ、もうこのままでいたい。
なんて想いは言葉でも体でも表せず、事は進み始める。
気まずそうにしながらも、しっかり目を見て真っ直ぐに伝えてくれる。夜久さんらしい言葉や凛とした目。
どうすればいいのか、と思うのと申し訳ないのと嬉しいのと、気持ちがごちゃごちゃになっていく。
俯いてみるも答えがあるはずも無く、顔を上げると互いの視線が交差する。
よく分からないままに、そう言って沈黙と気まずさを破った。
そっちの好きじゃない、そう思われるのは分かっていたがなんと言えばいいのかが分からなかった。
でも____。
夜久side┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
そう。あなたにはトラウマがあった。
前に、過去の辛い話をしてくれたのを覚えている。
まるで自嘲するかのように無理やり笑うあなたを見るのが辛かった。
『だから……ごめんなさい。』
キッパリ断ってくれる所もやっぱり好きだと思った。
『でも……嫌いだとか全く思ってないのでっ、これからも仲良くして欲しい…です……』
結局うまく断れてないところも、やっぱり好きだと思った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。