▒月島蛍×あなた
「チョット……起きなよ」
薄らと聞こえるセミの鳴き声とともに誰かの声が夢の中を彷徨う私の耳に響いた。ゆっさゆっさと体を揺すぶられて瞼をゆっくり開ける。
あなた「んん………つきしまくん?なんで教室に……今夏休みじゃ…」
月島「それは僕だって聞きたいよ。気づいたらここにいたし、扉開かないし」
あなた「扉が開かない?月島くんの力がないだけじゃなくて?」
月島「君ってそんなデリカシーない人だったっけ?」
ていうか男バレ舐めないでくれない?と付け足しながら顔を顰める月島くんを背に、寝起きの体で扉を開けようとするも、ビクともしない。
望みをかけて窓の縁に手をかけて引っ張ってみてもあかない。
締め切ってある部屋だが、クーラーは良く効いていて涼しい。
何日か前まで毎日のように通っていた教室なのにどこか異世界のように感じてしまう。
突然スピーカーから不快な音が流れ始めた。
ジジ…キィィン……
『いやぁ、夏休みではありますが学校に来てもらった理由はひとつ!キュンが足りない!』
え、誰?何言ってんのこの人。
そんな会話をしながらスピーカーの方を見ていると、スピーカーからはキュンが足りない!以上におかしいことが流れた。
『そこで!何となく男女二人を教室に閉じ込めてみたがやはりキュンが足りない!!もう一度言うがキュンが足りない!!!そこで!…君ら二人にミッションだ。』
この3秒後に始まった、
"どちらかが相手にキスマークを付けないと出られない部屋”
あなた「……キスマーク、って…あの?」
月島「…」
"キスマーク”
いわゆる深い独占欲の証。
一種の愛情表現だ、と聞いたこともある。
月島「…で、どうするわけ?」
あなた「どう、と言われましても……」
月島「どちらかがすればいいんデショ。君はどっちがいいの」
あなた「……、付ける方はさ、やっぱ恥ずかしいじゃん。しかも月島くんだよ?でも付けられる方は…怖い、かな。痛いし……もし誰かに付いてるの見られて何か言われるのも嫌だし……」
月島「…どっちがいいか聞いたんだけど」
じゃあ月島くんはどっちがいいの、と聞くと俯いて「別に…」とだけ言った。
あなた「じゃぁ…月島くんが付けてよ……」
月島「…怖いんじゃなかったの」
あなた「痛いのは我慢すればいいだけ、だから」
見えないところに付けてよ、と見上げると「わかってるからこっち見ないでよ」と無理やり下を向かされる。
袖を捲られて、日焼け対策を頑張っているため白い方である肌が露になる。
身長差がかなりあるため月島くんの頭がこんなに近くにあることは中々ない。
腕に温かい感覚。と同時に湿った感じ…?
見ると狭範囲に、一瞬だけ月島くんの舌が這った。
あなた「え、なんで…」
月島「君が言ったんでしょ。痛いから怖い、って」
付けるとこ濡らしたら痛み和らぐって聞いたことある、なんて余裕そうに言う月島くんは再度私の腕に顔を近づける。
腕に月島くんの吐息がかかって擽ったい。
あなた「やっぱちょっとスト『ストォォォォップ!!!』…え?」
『もう十分っ!キュンが足りすぎておなかいっぱい!!帰ってよし!』
いやどういうことだよ。心の中で悪態を付くと横から舌打ちが聞こえた。
あなた「えっと……扉、開いたかな?」
気まずい空気が流れつつも二人で扉の方へ行き、手をかけるとすんなりと開いた。
教室の中とは打って変わって夏の暑い空気が身体にまとわりついてくる。
階段を降りていると、急に月島くんが沈黙を破った。
月島「どっちがいいか、って聞いたときに『しかも月島くんだよ?』って言ってたの、あれどういう意味?」
『……、付ける方はさ、やっぱ恥ずかしいじゃん。しかも月島くんだよ?』
あれか。
どういう意味、って___
お互いの気持ちが同じと言う訳でも無ければ付き合っている訳でもない。
そんな部活も同じ仲間にキスマークを付けるだなんて、と言う意味だったけど、。
好きでもない相手に付けたくない、と解釈されてしまうだろうか。
いやでも月島くんは頭がいいから……
月島「…言いたくなかったならいいけど。」
昇降口に着き、じゃ。とだけ言って去っていく月島くんに手を振りながら心の中でごめんと謝る。
キスマーク、って腕に付けたりもするんだな、と知識不足の頭で考える。
首筋とかに付けるものだと思っていたから。
でも、黒尾さんが前に言っていた"頬を触る意味”の様に、付ける場所にも何か意味があったりしたのかな。
腕へのキスマーク
"『あなたが好き』というストレートな気持ち。”
知らずに腕へ付けようとしていたのか、それとも___。
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なんとなくツッキーを選んでみました番外編。
所々おかしいところもあるけど許してください…
最近投稿少ないけどこれも許して欲しいです…
関係ないけど実は最近インスタ開設しました⚙️
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。