日差しは強いがまだ気温は上がりきっていない朝。
風に艶やかな髪を揺られながら、廊下の窓で青空を見上げるあなたを見つけた。
…………
…なんだコイツ。
いつもはすぐに振り返って笑顔で返事をするはずなのに、。
今日はなんだか眉毛……、みけん?に皺を寄せて怖い顔をしている。
なあ、と呼びかけながら肩を引っ張るとあなたはびっくりしたと言わんばかりに大きく肩を揺らした。
なんで1年の階に田中さんが…と出かけた言葉はあなたの声で遮られた。
結局全部聞き終わって全てを知ったあなたはあからさまに嫌な顔をしてこっちを向いた。
俺の顔に貼ってある絆創膏を見たあなたは、何か言おうとしたのか口を開いたが、そのまま口を閉じて何も言わなかった。
授業まであと3分、着替えてもいない田中さんの背中を見送り、それぞれの教室に戻った。
あなたside┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
昼休み、お弁当を持って5組に行ってみると、ちょうど目的の人物と会った。
そのまま階段の端に移動してお弁当を開く。
仁花ちゃんの話を聞きながら、卵焼きを口に運ぶ。
一通り説明を聞くと、仁花ちゃんは少し黙った。
『自分で戦える強さが欲しい』
それと、送ってくれたとき影山くんのこと___
『試合になると考えてる事が解るっていうか__初めて「友達」じゃなく「相棒」が出来た気がしてたんだ』
って言ってた。
日向がそんなこと言ってたなんて___
なんで泣いて……
そう言われて涙が目から溢れていたことに気づいた。
なんだ、馬鹿じゃん。
喧嘩とか本当に何してんの…。
怪我したら元も子もないのに。
、いつもはああなのに。
試合中は考えてることが解るような……って、自分でわかってるくせに。
本当に、本当に、バレーに熱くなりすぎなところも、他がダメダメなところも……
お弁当を食べ終わって、用事あったんだ!と焦ってどこかへ行ってしまった仁花ちゃんを見送ったが、昼休みはまだもう少し時間がある。
教室に戻ろうか、なんて階段で1人のんびりと考えていると、声をかけられた。
夜久さんにも黒尾さんにも言われた“好きな人”。
その対照であろう人物が現れ、意識すると顔が赤くなってしまう。
相談したいことあるんだった、と言う西谷さんに隣を勧めると、思ったより近距離になってしまい余計顔の赤さが増した気がする。
そんなことにはあまり気づかない西谷さん。前に言おうとしていえなかったんだけどさ、と話し始める。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。