第146話

昨日のこと
3,620
2021/06/03 09:54





日差しは強いがまだ気温は上がりきっていない朝。


風に艶やかな髪を揺られながら、廊下の窓で青空を見上げるあなたを見つけた。
影山飛雄
影山飛雄
…なぁあなた、

…………

影山飛雄
影山飛雄
あなた…?
…なんだコイツ。


いつもはすぐに振り返って笑顔で返事をするはずなのに、。















今日はなんだか眉毛……、みけん?に皺を寄せて怖い顔をしている。
なあ、と呼びかけながら肩を引っ張るとあなたはびっくりしたと言わんばかりに大きく肩を揺らした。
あなた
!ごめん、どうしたの?
影山飛雄
影山飛雄
…今日の夜、空いてるか?
あなた
今日の夜…特に予定はないけど…、
田中龍之介
田中龍之介
なんだ影山ァ!昨日のアレの後にあなたとデートかよ!
影山飛雄
影山飛雄
?!、…ちわっす
なんで1年の階に田中さんが…と出かけた言葉はあなたの声で遮られた。
あなた
昨日のアレ…?
田中龍之介
田中龍之介
宮城こっち帰ってきたあとな、……


結局全部聞き終わって全てを知ったあなたはあからさまに嫌な顔をしてこっちを向いた。
あなた
…、日向は大丈夫なんですか
田中龍之介
田中龍之介
おぅ、さっき謝りに来た。日向も顔に絆創膏貼ってたけど、アイツなら大丈夫だろ
俺の顔に貼ってある絆創膏を見たあなたは、何か言おうとしたのか口を開いたが、そのまま口を閉じて何も言わなかった。





田中龍之介
田中龍之介
やべっ、次体育なんだった…!じゃあなお前ら!
授業まであと3分、着替えてもいない田中さんの背中を見送り、それぞれの教室に戻った。



















あなたside┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈







昼休み、お弁当を持って5組に行ってみると、ちょうど目的の人物と会った。



そのまま階段の端に移動してお弁当を開く。
あなた
仁花ちゃん、あのさ…
谷地仁花
谷地仁花
あれだよね、日向と影山くんの……。あなたちゃんも聞いたんだ。
あなた
うん。詳しく聞きたいなって…思って
仁花ちゃんの話を聞きながら、卵焼きを口に運ぶ。


一通り説明を聞くと、仁花ちゃんは少し黙った。




谷地仁花
谷地仁花
…日向ね、影山くんと取っ組み合いしてるとき、こう言ってたの




『自分で戦える強さが欲しい』



それと、送ってくれたとき影山くんのこと___



『試合になると考えてる事が解るっていうか__初めて「友達」じゃなく「相棒」が出来た気がしてたんだ』


って言ってた。




あなた
……そう、なんだ
























日向がそんなこと言ってたなんて___























谷地仁花
谷地仁花
あなたちゃん…、!?
なんで泣いて……




そう言われて涙が目から溢れていたことに気づいた。












なんだ、馬鹿じゃん。




喧嘩とか本当に何してんの…。



怪我したら元も子もないのに。






、いつもはああなのに。


試合中は考えてることが解るような……って、自分でわかってるくせに。






本当に、本当に、バレーに熱くなりすぎなところも、他がダメダメなところも……


















お弁当を食べ終わって、用事あったんだ!と焦ってどこかへ行ってしまった仁花ちゃんを見送ったが、昼休みはまだもう少し時間がある。



教室に戻ろうか、なんて階段で1人のんびりと考えていると、声をかけられた。

夕
お、あなた!
あなた
!西谷さんっ、こんにちは!
夜久さんにも黒尾さんにも言われた“好きな人”。


その対照であろう人物が現れ、意識すると顔が赤くなってしまう。
夕
そうだ、今時間あるか?
相談したいことあるんだった、と言う西谷さんに隣を勧めると、思ったより近距離になってしまい余計顔の赤さが増した気がする。



そんなことにはあまり気づかない西谷さん。前に言おうとしていえなかったんだけどさ、と話し始める。
夕
新しくやりたいことあって…、練習手伝ってくれねぇ?

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