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あなたのことが心配になり、頭の整理が追いつかないままいきを切らしながら探した。
やっと見つけたと思えば、あなたは男の腕の中だった。
ああ、少し遅かった。
目に涙を溜めたあなたと、先程の食堂での西谷さんの様子を見て、なんとなく察した。
やっぱりあなたは、あの人のことが好きだったんだ。
なんとなく、そうなんだろうなとは思っていた。
ただ、今まで理解はできていたはずなのに、納得は出来なかった。
「俺にしろよ。」
黒尾さんが、彼女の身体をぎゅっと抱きしめているのが見えた。
陰からコソコソ覗いていたが、我慢の限界でそこから飛び出した。
自分でも、何故この雰囲気で2人の前に出てきてしまったのか分からなかった。
慌てたように離れた黒尾さんとあなたを見て少し不快になりながら、それ以上の不快の原因である二人の距離を広げるべくあなたの服の裾を引っ張った。
強く引っ張りすぎたのか、あなたはこちらによろけ、身体が僕の胸にダイブした。
鋭く光る視線が飛んできた。
と思えば黒尾さんは頬をかきながら気まずそうな笑みを浮かべた。
あなたside┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
微妙な雰囲気が流れたまま食堂に向かうと、仁花ちゃんや日向、研磨くんが残っていた。
ご飯いらないって聞いたけど、やっぱりお腹空くかな〜と思って…一応用意してたんだけど……
そう言ってくれた仁花ちゃんの優しさにまた涙が出そうになる。
少し冷めてしまった遅めの夕飯を頬張っていると、日向と研磨くんが心配そうに顔を覗き込んできた。
え、
確か一緒に食堂に来たはずなのに……。
ゆっくり飯食っとけよ!
眩しいくらいの笑顔を向けながらかけて行ってしまった。
黒尾side┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
あなたの後ろについて食堂に行く途中、あなたの想い人が第一体育館にいるのを見つけた。
あなたに黙って、なんとなく、声をかけてみた。
二人で体育館の入口の階段に座った。
あなたに好かれることだけじゃない。
言い出せばキリがないけど、一番はあなたからの告白を、恋をよく理解しないまま振るような__そんなもったいないことをできるのが羨ましい。
あなたが俺のことを好きでいてくれたら……
でも、彼女は幸せでいて欲しい。
俺ができることなら___
あなたのためなら___
最後にそう伝えると、「チビチャン」が走ってきた。
「あなたが黒尾さん居ないからって心配してましたけど…」
あなたには幸せになって欲しい。
でもやっぱり、その隣で一緒に幸せになるのは俺がいい。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。