花巻「なぁ、あなた」
あなた「なに?」
下校のときもちゃんと送ってくれるお兄ちゃん。
人が少ない時間で騒がれたりしないから取り敢えずラッキー…かな?
まぁ、暗い時間に一人で帰るのはちょっと怖い…し。
校門で待っていたお兄ちゃんと合流し、街灯が照らす道を歩く。
「あのさ…」と珍しく真面目な表情で言うお兄ちゃんは、目を逸らしながら言葉を紡いだ。
花巻「送ったりするのは、別にお前が恋人を作らない様にする為……とかじゃねぇから」
あなた「……うん。ありがとう」
正直、そう考えていた。
恋人を作らせないようにする為、だと__
でもそれは悪い意味じゃなくて、私のことを思って…傷つかないようにって思ってくれていたんだと勘違いしていた。
勘違いではあったけど、お兄ちゃんの優しさと気遣いは変わらない。
もう一度……今度は丁寧にありがとうと言って、窓から明かりの漏れる家のドアを開けた。
”恋人を作らない様にする為……とかじゃねぇから”
……じゃあ何の為?
____決まってる。
私を晴樹に、会わせないようにするため。
ピロンと通知のなった携帯を手に取り、女子高生らしい会話や文面に溢れたその画面を開く。
朝の長身の子……影山のこと、か。
好きな人……
久々に会った晴樹は変わってしまって……
それでもバレー部の皆は私を良くしてくれて…
距離感なんか全くわかってない奴も居るけど、それでも一緒にいるのが楽しい仲間たち。
『女子高生なら、もっと恋愛してもいいんじゃない?』
少し前に従姉妹に言われた言葉。
女子大学生でイケメンの彼氏を持っている。
傷つくことをわかっていても、それ以上の大きさの幸せがある…はずの恋愛。
その幸せを、たとえ傷ついたとしても…求めてもいいだろうか。
((語彙力、今日も無さすぎ…
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。