今日も、40分かけて移動する。
電車の中で、今日見た夢をふと思い出した。
やっぱり灯君は、遥花と付き合うんだろうな…
だって、私には幻滅したもんね…。
と、悲観的な考えをしながら、窓の外を見る。
相も変わらず、景色は"冬色"だった。
……もう昨日の失態が噂されているのだろうかと、少し怯えながら学校についた。
と、私の肩をブンブンと揺する。
この様子じゃ私の昨日は知られてなさそうだ。
ごめんね。満儚。
まだ私、あの事は隠しておきたいの。
関係を、壊したくないから。
少し、笑いながら怒り気味で満儚は自分の席へと着いた。
今日も普段と変わらない学校生活が始まった。
満儚はいつも通り話しかけてくるし、私と灯君も休み時間に話す。
でも、1つ変わったことがある。
それは、遥花が私のことを『結々乃』と呼ぶようになったことだ。
これには、灯君も気づいたようで、『仲直りできたんだね。』と言っていた。
そして、5時間目の英語のとき。
今日は、英作をして隣の人の文を添削するというものだ。
なんでも、先生は客観視できるようになるためだと言う。
私は灯君にノートを渡す。
と、灯君もノートを渡してきた。
今日のテーマは昨日の夜ご飯について。
他にテーマはなかったのかと、ツッコミたくなる。
私は昨日、食べずに寝たからその日の朝ごはんのことを書いておいた。
灯君のノートに書かれている英文は、文法からスペルまで全てあってた。
最後の一行に目を通す。
どうせ、この行も完璧なのだろう。
すると、そこには
『やっぱり結々ちゃんが好きだ』
日本語でそう書いていた。
そもそも英文で書いてない時点で、添削にもならない。
でも、嬉しかったから、返事を書いた。
『私も』
と、日本語で。
隣の灯君を見ると、少し赤くなっていた。
そういったので、私はノートを灯君に返す。
灯君は、こちらを少し見てはにかんだ。
そして、私のノートには
『今日の放課後、デートしよう』
という文字。
消すにも消せなくて、この英語のノートには、場違いな日本語が残った。
***
遥花は、帰り際にこんなことを言った。
遥花の周りの女子たちも普段は私に冷たい目線をくれてやるのだが今日は、『最近有宮さん明るいよね』と言っていた。
何も、大人しくなる必要なんてなかったんだ。
明るくいるのが1番だったんだよ。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!