その日の朝から、私たちは争っていた……。
と、言いたいところだが、そんな素振りを見せることなく、現在3時間目の化学の実験中である。
今日の実験は、ホールピペット、メスフラスコ、ビュレット、コニカルビーカーを使った『中和滴定』という実験。
これがテストに出るというから、手順から何から何まで全てノートにとっている。
そして、私の班には秀才がいる。だから実験が失敗することはない。つまり、ノートが正しく取れるということだ。
ちなみに、この席順は名前順で、遥花と灯君は同じ班。
恋々ちゃんは、ニコッと笑った。
***
そして、私と遥花は争うことなく平和に放課後へ。
放課後からは、平和ではなくなるだろうけど…。
満儚は最後に意味深な言葉をつけて帰っていった。
知ってるのか。
私は、苦笑する。
応援してくれてる従姉妹にちゃんと返してあげようと思う。
そして、15分もするとみんな教室からいなくなっていた。
この修羅場を目撃するのは、私と遥花と灯君。
さぁ、幕開けだ。
灯君は頭を下げた。
私は普段自分でも出さない嬉しそうな表情をしていたと思う。
そして、灯君は頭を上げ遥花を見据えた。
灯君は真剣な目で遥花に伝える。
遥花は、瞳を暗くした。
そう、闇が垣間見えたのだ。
遥花は、悲しそうに灯君を見つめる。
遥花は、爆弾を落とすように語り始めた。
それは、私が墓場まで持っていこうと思っていた、"知られたくない"ストーリーだった。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。