満儚は今日もみつあみを揺らして微笑む。
満儚の家はそこそこ学校に近い。
自転車で行けるほどだ。
にも関わらず、朝から私の家まで来てくれた。
私の家から学校までなんか、軽く40分はかかるというのに…
まぁ、彼女なりの心配なんだとは思う。
そういえば、昨日の車の中でお父さんが言っていたのを思い出した。
『明日の朝は俺も母さんも家を4時には出ないと行けないんだ。すまないが、満儚ちゃんを呼んでおくから、一緒に行ってくれ。』
と。
私は、階段を降りて階下に行く。
それほど、足に痛みは無い。
でも、体育は見学したほうが良さそうだ。
満儚は、私が椅子に座ってからテキパキと朝ごはんを出してくれた。
もはや、お母さんのようだ。
それから、準備や色々して、あっという間に家を出る時間に。
誰もいないけど、言うのは礼儀だと思った。
満儚も同じようにする。
満儚から過保護、発言が連発した。
一緒のクラスなのに時間割を把握してないとは……
少しだけ、呆れる。
平然と満儚は、言った。
あたかもそれが当たり前のように。
私は苦笑する。
初めてかもしれない。
高校まで行く道のりを誰かと一緒に行くのは。
楽しい。
そう思った。
***
今日の学校は、誰にも心配されることなく平凡に終わった。
あぁ、これでは語弊があるかもしれない。
一人、灯君は大丈夫かと聞いてきたが、私は元気だと答えた。
私と灯君が話しているのを、遥花は何か言いたげな顔で見ていた。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。