ときは、放課後。
みんな、部活に行ったり、家に帰ったりと。
教室に残ったのは、私と灯君だけ。
灯君は、私に英語を教える気でいる。
まぁ、私から誘ったんだから当たり前なのだが。
私はノートに灯君が教えてくれたことを書き留める。
そろそろ、言わないと。
長引かせるべきじゃない。そう思ってるのに。
伝えられない。この気持ち。
私は笑顔で誤魔化す。
思いついた。名案だ。
私は、ノートに英文を書き込んだ。
『I love you.』
勇気を出してノートに書いたこの3単語。
Part3にはこんな文章は出てこない。もちろん、こんなニュアンスの文章も。
しばらく、私は灯君の顔を見れず、少しうつむき加減になっていた。
この静かな教室には外からの運動部の掛け声と、校舎内からの吹奏楽部の音色が空間を支配する。
何秒、いや、或いは何分か経った頃。
できれば、最初の肯定でわかってほしい。
私の2単語目が聞こえたのかどうかはわからないけど…
せめてと、じっと灯君の目を見る。
ガラッ
そこには、資料を持って走ってきたと思われる、遥花がいた。
明らかに、遥花は怪訝そうに聞いた。
灯君の表情に戸惑いが現れた。
あぁ、これがいわゆる三角関係か。
それに、本当に遥花は、灯君に告白してたんだ…
あれよあれよと、私の口から言葉が紡がれる。
遥花はにっこりと笑った。
───二人は挑戦的な笑みを浮かべているだろう。
自分の意思を通そうと。
遥花は、自分の机の中からプリントを取り出した。
灯君は迷うことなく頷いた。
私は、彼がきっとどちらかを選んでくれると信じている。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。