遥花は、灯君のコートを握った。
そこで、遥花は崩れ落ちた。
灯君も遥花の背中をさすっている。
もう、誤魔化しても意味のないことを知っていた。
私は、うっとりと語りだす。
『その頃から私は、灯君が好きだったよ』
私はニコッとして、そう言うと、灯君は『ありがとう』と少し複雑な表情で言った。
私は泣き崩れている遥花に目線を合わせるために、腰を下ろす。
本当の少し。
たった数分。
それでも、あのときの喜びは"事実"だった。
私はもう二人の顔も見れずに教室を出た。
それから、下を向きながら廊下を走る。
頬は赤く、泣くのを堪えようと下唇を噛む。
それでも私の目には、涙が溜まっていた。
ポツ
あぁ、落ちちゃったよ。涙。
止まらなくなるのは知ってるのに。
徐々に歩みを止めて、座り込んだ。
そこで、溜めていたものが溢れ出した。
私は、階段の踊り場で泣いた。
そのうち、足音が聞こえてくる。
『誰か来る』
そう思ってももう、涙は止まらない。
走ってきたのは遥花だった。
私は、今思ってることをそのまま言った。
『私、悔しかったんだ』
少し涙目の遥花は笑って言った。
私は、教室へと急いだ。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!