キィィィィ、ドンッ!
車のブレーキ音とぶつかる不吉な音。
目の前で男の子が消えた。いや、とんだ。
ゆっくりと男の子に手を伸ばす。
やっと体に手が触れる。体を揺すり、名前を呼んでも反応はない。
コロッと顔がこちらを向いた。
生気のない、虚ろな目が見つめ返してくる。
「いやぁぁぁぁ!」
ぎゅっと目をつむり、頭をかかえただ叫ぶことしか出来ない。
「っは!」
目を開けると真っ白な天井が見えた。
私の部屋だ。夢から覚めたみたいだ。
まだあの虚ろな目が脳裏に残っている。
パジャマが体に張り付いて気持ち悪い。
拳をぎゅっとにぎりしめ、気持ちを切り替える。
(「よしっ、大丈夫…」)
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。