第36話

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2020/08/12 13:02
あなた

亜嵐のお父さんそろそろ帰ってくるかな?

となりで線香花火を見つめながらあなたがつぶやく
亜嵐
まだ9時半だろ?こんなに早く帰ってねぇよ
あなた

相変わらず仕事、忙しいんだね

亜嵐
さぁな。本当に仕事なのかもわかんねーし。
亜嵐
つーか俺の事なんてほったらかしだし
あなた

亜嵐がお父さんのことそんなふうに言うの珍しいね

亜嵐
…そーだな。言ってみただけ
あなた

亜嵐…

亜嵐
そんな顔すんなって。ブタあなた
あなた

あーひどっ

亜嵐
アハハハッ


母ちゃんが死んでからもう10年以上の月日が流れた

あれからこの家で父ちゃんとふたりきりで暮らしてきた。


けど父ちゃんと過ごした時間なんてほとんどない


仕事の付き合いとか言って、

酒飲んで帰ってくるのはいつも夜中だった

俺のことはあなたの親にまかせっきりで

小さい頃も遊んでもらった記憶はない。

授業参観や運動会、学校行事は

いつも仕事だって言って


一度も来てくれなかった…。



別に寂しいとか悲しいとかそんなんじゃない。


生きていくために毎日必死に働いてくれてることもわかってる。



それでも時々思う。


俺のこと父ちゃんはどう思ってるんだろうって
あなた

あ、落ちちゃった

あなたが持っていた線香花火。

オレンジ色の丸い火が地面に

ポトッと落ちた。


あなた

亜嵐の勝ちだね。あ~悔しい!もう1回やろ?

あなたは俺の服を掴んで微笑む
亜嵐
あ、あなたが揺らすから俺も落ちたじゃん
あなた

へへっ。2回戦目ね

亜嵐
その前にやることあんだろ
あなた

デコピン?はいはい。お手やわらかに。

あなたは左手で前髪を押さえておでこを見せる

そして、ぎゅっと目をつぶった。


なぁ…あなた。


お前はなんで玲於がいいんだ…?

俺はあなたの頬にそっと手を伸ばした


あなた

早くしてよ亜嵐

目をつぶったままあなたが言った

あなたのやわらかい頬に手をあてる

目をつぶるあなたの顔を見つめた

玲於じゃなきゃダメなのか…?

俺じゃダメか…?

ゆっくりと顔を近づける



俺はあなたにキスをした_______



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