第35話

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2020/08/12 03:06
沢山あった花火も少なくなってきた頃。

玲於
そろそろ線香花火対決でもしますかね~
そう言って玲於が

線香花火を取ろうとした瞬間

玲於のケータイの音が鳴り響く


玲於はケータイをポケットから取り出し

しばらく画面を見つめていた。
あなた

メール?

そうあなたが聞くと

玲於はケータイをズボンにしまった。
玲於
ごめん、線香花火対決は亜嵐とあなたでやって
玲於
ちょっと行くとこできた
あなた

夏恋のとこ、?

あなたが聞くと玲於は笑顔で頷く
玲於
うん。バイトでなんかあったみたいだからさ
玲於
ちょっと行ってくる
一瞬、悲しい顔したあなたの顔を

俺は見逃さなかった
玲於
じゃ抜けるわ~
亜嵐
おぉ。
玲於が手を振り、俺も右手をあげる

帰っていく玲於の後ろ姿を見つめるあなた。

あなたの寂しそうな顔に

俺は手を伸ばしかけるけど

拳をぎゅっと握りしめて手を下ろした



縁側に置いてある蚊取り線香のにおいと煙が

夜風に乗って漂ってくる


にわにしゃがみこんでうつむいたままの

あなたを俺は見つめていた。

胸が締め付けられそうだった。

玲於が藤井の所に行ってしまったことが

そんなに悲しいなんて…。


せっかく今日は楽しそうだったのにな。

俺じゃダメかな?


玲於がいなくちゃダメなのかよ…あなた…。

亜嵐
あなた、線香花火やろーぜ
あなた

うん

亜嵐
対決な?
あなた

いーよっ!負けたらどーするっ?

亜嵐
あなたが決めていいぞ
あなた

うーんとねぇ、じゃーデコピン?

亜嵐
やだ
あなた

ふふっ。あたしが決めていいって言ったんじゃん



ムリして明るく振る舞うあなたも。

あなたの気持ちも。

全部わかってる。


そんなあなたを見て胸が痛むけど

こんな痛みくらい耐えてやる。

俺はあなたのことが好きだから

だから絶対に俺は諦めない

ふたり並んで地面にしゃがみこみ

線香花火に火をつける


小さくパチパチと光る線香花火を見つめた。

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