第42話

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2020/08/19 05:58
ご飯を食べ終えてあたしの部屋に亜嵐とふたりでいた。

床に座り、小さなテーブルで夏休みの宿題の

プリントをやっている。

亜嵐
あなた、消しゴム取って
あなた

あ、うん

夏休み前、3人で花火をした時。

あの日、亜嵐に告白された。

でも次の日、亜嵐に会ったら

何事も無かったような態度だった。

どんな顔して会えばいいんだろうかとか、

あたしの方が逆に意識してたみたい。

亜嵐の態度があまりに普通すぎて

気づけば普段のあたしたちに戻っていた。

もちろん気まづくなりたくないし

良かったんだけど……。

亜嵐
…あなた?
あなた

え?なに?

亜嵐
全然進んでねぇけど
あなた

あ…うん

亜嵐
俺終わったから。
亜嵐
風呂入りてぇし、そろそろ家帰るわ
あなた

もう終わったの!?はやっ

やっぱり、あたしより頭いい
亜嵐
俺のプリント見たい?
あなた

え?いいのぉ?

あたしが手を差し出すと

亜嵐はべーっと舌を出す
あなた

ちょっとぉ

亜嵐
見せるわけねぇだろ?
あなた

ケチー

亜嵐
じゃーな
亜嵐はあたしの部屋を出て

自分の家に帰っていった。
あなた

前と全然変わんないんだけど…意地悪だし

あの日のことは夢だったとか…?

あたしのこと好きって言ってたくせに

あの日以来、そんな態度は全然感じない。

自分の唇を指先でつまむ。

ちがう。やっぱり夢なんかじゃない。

亜嵐にキスされた時の

唇の感触をまだ覚えている
あなた

何思い出してるんだろ、あたし…

恥ずかしくなって自分の顔を両手で覆ったおお
あなた

はぁ…

キスしたのは2回目だって言っても

幼稚園の時と今じゃ全然違う。

そういえば、すべり台の上でキスしたのが

亜嵐ならお昼寝の時間にキスしたのは

玲於ってことだよね?


あたしのファーストキスは亜嵐だったんだ。

ていうか幼稚園の時のキスって

ファーストキスっていうのかな?

どっちにしろ、幼稚園の時だろうと今だろうと

亜嵐があたしのファーストキスの相手…。

あなた

あーもぉ!

あなた

玲於のことで頭がいっぱいなのに

あなた

亜嵐まであたしを混乱させて…


亜嵐はあたしが玲於のこと好きだって気づいてた。

玲於はあたしの気持ちなんか

これっぽっちも気づいてないのに。

なんで亜嵐はあたしの気持ち全部分かっちゃうわけ…?

それくらいあたしのこと思ってくれてるってこと…?

胸がギュッてなる。


好きな人が他の人を想ってる。

あたしが苦しいのと同じくらいに

亜嵐も苦しかったりするのかな…?

自分を想ってくれる人を好きになれたら

こんなに苦しまなくて済むのに。

なんで玲於じゃなきゃダメなの…?

_______ガチャ…。


部屋のドアが開き玲於がやってきた。
玲於
やっほー。あれ?ひとり?
あなた

うん。亜嵐なら家帰ったよ

玲於
なんだよぉ。亜嵐の分のアイスも買ってきたのに
あなた

じゃーあたしが2個食べるっ

あたしは元気よく手をあげて言った
玲於
昼間もかき氷食べたのに?さっすが~
あなた

うるさいなぁ

笑いながら玲於はあたしの横に座ってきた
玲於
夏休みの宿題やってんの?
あなた

まぁね

玲於
終わったら見せて?
あなた

ちょっ…ズルくない?見せないしっ

あたしの言葉に満面の笑みを見せる玲於
玲於
見せてくれてもいいじゃんか~
玲於
あなたちゃん。お願いっ
本当に調子いいんだから。

まぁ、あたしもさっき亜嵐に同じこといったけ?
玲於
アイス食べよっと。ほらあなたも。
玲於
溶ける前に食べなっ
あなた

マンゴー味のアイス!

玲於
俺の絶妙なチョイス、どう?
あなた

最高~!玲於~っ 大好き~

玲於
だろ~?
ほら、また。

そんな笑顔されたら。

必死に抑えようとしてる好きって気持ちが

一瞬で大きくなって心の中をいっぱいにする

それがまた悔しくて、切なくてたまらない。

あなた

あ~美味しかった!ごちそうさま~玲於

玲於
どういたしまして~
アイスを食べ終えてあたしがプリントの続きを

やり始めると玲於は床に落ちていた

雑誌をペラペラとめくりだした。


あなた

いままで…夏恋といたの?

玲於
ん?うん
いくら夏休みで学校で会えないからって

バイト先も同じで会えるのに。

ふたりは本当にラブラブなんだな…。

また胸がぎゅって苦しくなる。

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