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第7話

両親へ挨拶?
78
2018/12/04 09:10
九条怜
九条怜
……立派な犬小屋ですね
私の家の"リビング"を訝しげに見渡しながら呟く九条さん。
姫花の母 : 晴美
うちは猫派なので、犬はちょと
お茶を九条さんの前に置きながら、可笑しそうに笑う私の母。

ーーって⁉︎ 猫ならいいの⁉︎ しかもうちが猫派だったの初めて聞いたよ私っ!
九条怜
九条怜
おっと、それは失礼を。これぐらいの広さがあれば猫も喜ぶでしょうね
姫花の母 : 晴美
ふふ、そうね。いっぱい走り回れるから、きっと喜ぶわね。
なんで嬉しそうなの⁉︎ お母さん⁉︎
今のは絶対、貶し言葉だよ。喜ぶ要素はないからね、お母さん。

しかも九条さん、私の時とは言葉使いや表情が違う……毒や棘はあるけど。
九条怜
九条怜
(ゴクッ)……初めて飲む味ですね
姫花の母 : 晴美
今日スーパーで特売されてから、思わず買っちゃったの。お口に合ったようで良かったわ
九条怜
九条怜
……そうでしたか。通りで舌が痺れるわけですね
姫花の母 : 晴美
あら、褒めても何も出ませんよ
褒めてないよ、お母さん。
しかも会話も噛み合ってないよ。
……うっ、なぜこんなことに。
九条さんが、お母さんとテーブルで向き合って座ってるだけでも違和感あるのに、私が九条さんの隣に座る現状……。
すっごく逃げ出したいよ!
姫花の母 : 晴美
それはそうと
と、口に手をやってニヤニヤと笑うお母さん。


い、嫌な予感……。
姫花の母 : 晴美
九条さんは姫花の彼氏ーー
ーーダンッ。と、ドアが勢いよく開いた音が、お母さんの声を遮り、乱暴な足音が近づいてくる。

姫花の父 : 信夫
母さん無事かっ‼︎‼︎
バンッ! と、リビングの扉を開け放ったお父さんは、蒼ざめた顔で肩から息をしていた。
姫花の母 : 晴美
あら、そんなに慌ててどうしたの?
もしかして姫花の彼氏さんを見に?
姫花の父 : 信夫
え? 無事……なのか? 
じゃあ、あれはーー彼氏だと⁉︎
九条怜
九条怜
私がお義父様の会社にご連絡して、
早急に帰宅するようお願いしたのです
スッと九条さんは立ち上がると、目を見開いて驚愕するお父さんに頭を下げた。
九条さんの洗礼された一連の動作に魅せられたせいか、お父さんは困惑気味にたじろぎーー。
姫花の父 : 信夫
は、はぁ? それはどういう……
姫花の母 : 晴美
もう鈍いわね。彼氏さんを私達に紹介するために貴方を呼んだのよ
姫花の父 : 信夫
何っ⁉︎  お、お前が姫花の彼氏だと‼︎‼︎
九条怜
九条怜
彼氏ではありません
父&母
え?(あら?)
九条怜
九条怜
姫花を嫁にしたく、ご挨拶にきました
姫花の父 : 信夫
よよよよよ嫁っ⁉︎⁈⁉︎⁉︎
姫花の母 : 晴美
まぁ〜
お父さんは驚愕のあまりか、腰を抜かす勢いで後ずさり、壁に衝突。
お母さんはなぜか顔を赤らめて、興味津々の眼差しで私と九条を見比べている。
姫花の父 : 信夫
ひ、姫花! お、お前結婚する気なのか⁉︎
情けない顔でゾンビのように這いずり、私の膝を揺らしながら縋るお父さんの姿にーー、


私は正直、ドン引きしてしまった。
月森姫花
月森姫花
し、しないよ。私、まだ高校生だし。
この人がその……勝手に言ってるだけで
姫花の父 : 信夫
その通りだ! 姫花はまだ高校生!
断じて結婚なんぞ認めない!!
お父さんは息を吹き返した魚のように立ち上がり、テーブルに乗り出して九条さんを睨みつける。
九条怜
九条怜
姫花は16歳だとお聞きしていますので、結婚はできますよ
姫花の父 : 信夫
ハンっ! 今のご時世で16歳の娘の結婚を許す親が何処にいるんだ‼︎
九条怜
九条怜
そうですね……。身近な人物でいいなら、ここにいると思いますよ?
九条さんは嘲笑うように口を緩めて、お父さんに指を指す。
姫花の父 : 信夫
お、お前ぇ! どこの馬の骨とも知らない奴に、可愛い姫花との結婚なんて絶対に認めない!
そう憤ると、九条さんから私を守るように間へと入り、仁王立ちする。


お、お父さん。私、初めてかっこいいてーー
九条怜
九条怜
そういえば、自己紹介がまだでしたね。
ーーと、名刺を取り出してお父さんへ手渡す。
お父さんは訝しげな目で名刺を引ったくるとーー
姫花の父 : 信夫
ノノノノインの社長⁉︎
あ、あの有名な……
九条怜
九条怜
ええ。若輩者ではありますが、社長を務めさせていただいています
ぶるぶると小刻みに震えているお父さんをに、笑いかけるとーー
九条怜
九条怜
お義父様も仰っていましたが、高校生で結婚は私も早いとおもいますので、まずは婚約をさせていただければと
姫花の父 : 信夫
こここ婚約?
九条怜
九条怜
ええ。婚約中は姫花にうちの会社でモデルをやっていただきますので給料も入りますし
姫花 &父 &母
ーーモデル⁉︎
き、聞いてないよ! そんなこと!
九条怜
九条怜
こちらが契約金になります
九条さんはテーブルに銀色のアタッシュケースを置いて、おもむろに開けるとーー
姫花の父 : 信夫
ここここれは⁉︎
姫花の母 : 晴美
……凄いわね。(ゴクッ)
ーー札束で埋め尽くされていた。
九条怜
九条怜
姫花との婚約、認めていただけるのでしたら……こちらは今日お渡しもーー
父&母
娘をよろしくお願い致します!
颯爽と九条さんの前で跪くお父さんとお母さんは、頭を下げて了承してしまった。
九条怜
九条怜
姫花、これからよろしくお願いします
と、爽やかに笑う九条さんを、私はただ呆然と眺めることしかできなかった。

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