部活終わり、急に雨が降り出した。
あたしは傘を持ってきていない。
一緒に帰るはず凜音は教室に忘れ物をしたとかなんとかで「先に帰っといて!」と言われた。
とかいうめんどくさい(けど可愛い)知樹には
と断りを入れておいて、どうしようかなー。と考える。
しょうがないから凜音に傘にいれてもらおう!
と勝手に決め、教室への道を急いだ。
教室に続く階段をだるいなー。と思いつつ登ると、聞きなれた誰かの声がした。
「___恋ってうざいよねー。」
…え?
まさか、転校前にこんなところで自分自身の陰口を聞くとは思わなかった。
あたしははぁ、とため息をつく。
あたしの悪口いってる色葉かぁ…。
なんだかあたしは笑いそうになってしまった。
でも、なんだかその場から動けなくって。
体がガタガタして、正直…ショックなのかもしれない。
色葉なんかには嫌われたっていい。
なんて強がりが、本当な訳なかったんだ。
しばらく呆然と立ちすくんでいても、色葉と、クラスメイトの声は聞こえ続ける。
「ほんと、うざい。」
「理楓につきまといすぎ。」
「色葉がかわいそうだよ!」
「理楓もかわいそうだよね。」
「ねぇ。凜音もそう思わない?」
色葉の冷たくて、試すような声。
聞こえないはずの、
凜音の息を吐く音が聞こえた__
動かなかった体だったけど、あたしはなんだかホッとして、教室の方へ歩いた。
凜音が下を向いて複雑な表情で教室から出てくる。
凜音は、無理をしてるって丸わかりの笑顔をうかべた。
あたしは恋に、言う。
あたしはにこっと笑う。
この言葉は、あたしの本心。
凜音は、目を見開いて何も言わずに切なそうに笑った。
あとちょっとだけど、よろしくね。凜音。
転校まで、あと6日。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。