第20話

20話
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2018/04/27 23:00
奏歌はふふと言いながら部活にいこうという。
恋
うん
そう言うと、知樹が追いかけてきた。
知樹
知樹
広…恋!!!!
彼はもう、あたしのことを恋と呼ぶみたいだ。
恋
なに?
知樹
知樹
なぁ、ちょっと…話いい?
表情が無理といえないような感じので、
恋
いいよ
と言うと、「こっちきて!」と手を引っ張られた。

きっと告白だろうな。



…めんど。
知樹
知樹
あの、転校するんだよな
随分と情報が回るのが早い。
恋
そうだけど。
知樹
知樹
おれ、めっちゃ悲しい
だからなんだよ。




少し嬉しい。そう思うなんて。
恋
ありがとう。
知樹
知樹
おれさ、恋のことが好きです
直球で言ってくるのね。
知ってる。知ってる。



今更遅いんだわ。知樹。
知樹
知樹
俺んこと全然好きじゃないの
知ってるけど言いたかった
恋
全然好きじゃなかった?
知樹
知樹
うん、だっていつも俺のこと
鬱陶しそうだったから
それでも好きだったなんてドMか



知樹に告白されるなんて全然キュンともしない。
予想通りのシチュエーションで、
あたしは「ごめんなさい」って
彼にとっても、あたしにとっても、予想通りの答えを言うだけ。



_____なのに。



こんなにも言葉にできない。
ごめんなさいが言えない。


あたし、何思ってるんだろ。
時間なんてないのに。

考えさせてなんてずるいこと言えないよ。
言葉はあたしみたいな人にとってとても必要なものだ。

クールって思われがちだけど、カッコつけてるだけ。
言葉、気持ち、全部あたしにとって大切。
特にあたしは不器用だから。
少しずつ形にしていこう。
恋
あたし___
もうさよならしなきゃいけない。
部活に行きたくない。
気まずいはずの空間がとても気持ちいい。

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