例えばもし、
あたしがあの子みたいに完璧で可愛くてすごい女の子だったら、
色葉はあたしの事を好きになってくれたのだろうか?
____なんて。
あたしはあの子が多分、きっと、おそらく、理楓より好きだ。
なのに、彼女といると、悲しい。
彼女がよく出来すぎていて。
理楓もそうだけど、あたしの周りって完璧な子ばっかりなのかな。あ、凜音は除く。
あーあ、あたし、あの子と同じクラスだったらなぁ。
残念ながら離れちゃったからなぁー。
それでも、もし同じクラスだったら、それこそ色葉があの子につきまとっちゃうね。
あは、奏歌の事考えてたら、ちょうど奏歌がやってきたよ。
この子は奏歌。
あたしと凜音の幼なじみであり__素晴らしい子。
すっごくかわいくて、文武両道だし、性格もいいし__
そしてなにより、あたし達と一緒に始めたはずの部活…吹奏楽のソロコンテストで関東大会まで行っちゃった。
ピッコロ初めて1年たっていないくらいなのに。
あたしの楽器はテナーサックス。人前で聞かせられるような演奏じゃなかったからソロコンには出なかったんだけど…
こんな子とあたしが幼なじみなんて、信じられない。
それに____
奏歌といると、自分が惨めに思えて、しょうがないんだ。
仕事?って一瞬思ったけど、そうだ。
彼女は完璧な上にオマケまでついていた。
彼女は、人気雑誌の専属モデルをやっている。
しかも、1人で表紙を飾るぐらいの人気モデル。
もう嫉妬とかを通り越して、尊敬だな。
簡単に言うけどさ…
あたしじゃ、絶対に無理だわ。まず顔的に。
あたしはくすくすと笑って、
と言った。
奏歌は、一瞬傷ついたような顔をした。
けど、それはほんの一瞬で、複雑な笑顔で、くすくすと、あたしのように笑った。
「あ、奏歌だ。」
「相変わらず顔は可愛いなぁ。恋もいるよ。」
「2人が揃うと、神々しいやっ!」
「ほんとに。でも、奏歌の事あたし嫌いなんだ。」
「そうなの?」
「だって、モデルやってるし、ソロコンにも出たみたいだし。なんか才能をひらびやかしてるみたいで嫌なんだよね。」
「ははっそれただの嫉妬だよ?でも、それに比べて恋は謙遜しすぎだよね。」
「実力は相当なのに、ソロコンにも、出なかったんでしょ?」
「そうなんだ。恋らしいね。」
「モデルやったら、奏歌より人気出るんじゃない?」
「いや、それはどうだろ。正直、奏歌の方が可愛いよ。」
「まぁね。あ、もうこんな時間だ。早く行かなきゃ、出席遅れちゃうよ。」
「そうだね。行こっか。」
「うん!」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。