幼馴染の凜音が待ち合わせ時間に10分遅れてやってきた。
まぁ、いつもの事だけど。
謝りもしないのがムカつくなぁ…相変わらず。
あたしは遅れた事をなにも追及しようとしないで、挨拶を交わす。
だって、めんどくさいもの。
あたしが転校することは、だれにも伝えていない。
言ったら、待ち合わせに間に合うように来てくれるかも、謎だけど。
凜音はあたしが無口な事を知っているくせに、
わざわざ会話を続けようとどーでもいい事を聞いてくる。
そして、それが疲れるし、彼女の嫌いなところでもある。
ここからまた、凜音の長話がはじまる。
正直、あまり聞いていない。だるいし。
あたしはポケットからカイロを取り出してぎゅっと握りしめる。
あたしが喋りかけると、凜音はびっくりしたようにこっちを向いた。
__転校するの。
言おうと思って、口を噤んだ。
やっぱりやめだ。
あたしはそっとカイロをポケットに戻して、
複雑な笑顔を凜音に向ける。
凜音はきょとんと首をかしげて、笑った。
ありがとうの意味が分からず、
一瞬考えたけど、あたしの思考回路じゃ凜音の考えてる事は絶対に分からない。
あたしは、こくん。とうなずいた。
凜音はバスケの話をやめてふんふんと鼻歌を歌う。
学校の校門をくぐると先生が「チャイムなる二分前よー!はやくー!」と叫んでいて、あたしはため息をついた。
凜音の顔が面白くて、あたしは、つい笑ってしまった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。