第16話

鬼ごっこ開幕
624
2023/05/01 21:00
お祝いの日、当日。
現在時刻は13時45分。

私とシルクは、家の近くの公園に来ていた。
この前、シルクの症状が出てしまったところだ。

今日は結局、12時に仕事を終わらせた。
…まぁ、その分、ここ3日は早朝出勤したのだが。
この日のために、体調も整えた。


もうすぐ、他のメンバーも来る予定になっている。
待ち遠しくて仕方がない!
あなた
上手く行くかなー。
シルク
あなた次第だろw
あなた
む。
元陸部をなめるな。
シルク
そういや、そうだったなw


私とシルクは、お祝いの日らしからぬ格好をしていた。
2人とも、トレーニングウェアを着用し、アウターとしてお揃いのライトウェイトウーブンジャケットを羽織っている。

全身真っ黒。
どこからどう見ても、今から運動をする服装だ。
そして、2人の手にはGoProが。




そんな私たちの元に、何も知らないFischer’sのメンバーが集まってきた。
公園の入り口から、私たちが待つジャングルジムまでは約25m。
楽しげに会話をしていたメンバーたちも、私たちの服装や雰囲気の異様さに、途中で立ち止まる。
モトキ
…え?何?
マサイ
なんだ、あの2人…。
ザワつく5人。
私とシルクは目配せをすると、ジャングルジムから飛び降りた。
シルク
どーも!Fischer’sシルクです!
ンダホ
!!?
ダーマ
は?
ザカオ
な、なんだ?!
シルク
シルクからの挑戦状ーー!!!
シルクは、不敵な笑みで拍手をする。
私は、その様子を撮影する。

ブレブレかも。
ごめん。
シルク
今から、鬼ごっこをやろうと思います!
マサイ
はぁ!?
なんでだよ!
マサイの当然とも言える疑問に、シルクは「まぁまぁ落ち着け」とサインを送る。
シルク
今回の鬼は、君たち5人だ!!
ザカオ
え?!
俺らが鬼!?
ダーマ
逃げる側が、シルクってこと??
シルク
そ。俺と。
もう一人。
シルクが、私を指差す。
私は、撮影をしながら、みんなに向かってヒラヒラと手を振った。
ンダホ
えぇ!?!
まぁ、当然の反応だろう。
みんな、唖然とした表情だ。
シルク
では!ルールを説明する!
制限時間は3時間。
マサイ
3時間!?!
なっが!!!
シルク
その間に、3つの場所へ行き、ゴールを目指す。
ダーマ
どういうこと?
いまいち、イメージできないのだろう。
まぁ、初めてなのだから当然だ。

シルクが、1枚ずつ地図を配る。
シルク
その地図上に、赤で3つ、印がついている。そこが、通過ポイントだ。
ンダホ
よく、動画を撮影した公園ばっかじゃん!
ザカオ
水上アスレチックとかだな!
シルク
俺たち鬼は、そのポイントで待ち構えている。
1つのポイントにいる時間は15分。
誰か1人でも、鬼の1人と対峙したら、そこからタイマースタート!
モトキ
そのポイントまでの道のりでタッチするのもアリ?
シルク
もちろん!!
移動は乗り物使ってもオッケーw
そっちは5人いるし、上手く分担できんじゃね?w
ダーマ
頭脳戦も込みなわけだ。
シルク
で、最終ゴール地点が。
青で印をつけてる…
ンダホ
土手だね!
シルク
そゆことw
俺たちは、ポイントを回りながら、3時間後に土手に向かう。
1人でも逃げ切れたら、俺たち逃げる側の勝利!
2人ともタッチできたら、鬼側の勝利ってことでw
なんとなく、イメージできたようだ。
道中は頭脳戦。
各ポイントで、本格的な鬼ごっことなるはず。

私は、一人ずつGoProを渡した。
モトキ
これ、一応撮影してる、よね?
あなたちゃん映っちゃってもいいの?
あなた
ん〜…使うかどうかは、編集次第って言ってたw
モトキ
オッケー。
とりあえず、気にせず追いかけるよ。
みんな、各々準備運動を始める。
シルク
よーし!
10分経ったら追いかけていーぞ!
ザカオ
了解!
ダーマ
その間、作戦会議だな。
シルク
じゃあ、鬼ごっこスタート!!
私とシルクが逃げ始める。
が。
マサイ
は!?
シルク、あいつタクシー拾いやがった!!
ンダホ
え?!
ちょっと待って?
あなたちゃんは乗ってないよ?
モトキ
どゆこと!?
あなたちゃんを走らせて、シルク温存!?
案の定、メンバーは慌てているようだ。
この状況から分かるのは、シルクが初めのポイントで全力を出してくるということだけ。
ダーマ
作戦どうする??
正直、土手まで行かれると厄介だよね。
めちゃくちゃ広いし。
マサイ
だな!だから、理想は3つ目のポイントまででタッチすること。
ンダホ
ても、万が一のために、一人は土手まで温存した方がよくない?
モトキ
確かに…。
シルクの体力を、どれだけ削れるか…だね。
ザカオ
あなたちゃんはどうする??
マサイ
やーーわっかんねーー!
ンダホ
やばいやばい!
すぐに10分経っちゃうよ!
とりあえず。
最後に土手で対峙するのは、この中で一番動けるモトキに任せることになった。
残りの4人を2-2に分けて、シルクと私を追う。
ンダホ
俺とザカオはシルクを追うわ。
マサイ
オッケー!
じゃ、俺とダーマがあなたちゃんだな。
シルクが待ち受けているだろう第1ポイント「大島小松川公園」へは、ここから5キロほど。

走れば20分ほどだ。
頑張れば、鬼に追いつくかもしれない。
ダーマ
どこかで隠れてるかもしれないから。
注意深く見ていこう。
マサイ
だな!
ンダホ
じゃあ!みんな後で!!
追跡、スタート!!
シルク
さーて。
そろそろ出発したかなー。
シルクはタクシーで移動し、すでに第1ポイントに着いていた。

メンバーは、一体どんな作戦でくるだろう。
シルク
…あ、俺ー。
あなた、今どの辺?
シルクは、スマホを取り出し、私の位置を確認する。
あなた
ん?もうすぐ着く!
予定通り、近くで隠れておくねw
シルク
え!?早くね!?
シルクと私が近くの公園をスタートしてから、今で約15分。
そんなもんでしょ。
シルク
キツくねーか?
あなた
まだまだ、余裕w
…もうすぐ、シルクが…見え…あ。
シルク
ん?どうした?
あなた
ンダホさんと、ザカオさんだ。
聞こえないように、声を顰める。
私は、3人の姿が確認できる位置で、植え込みの陰に隠れた。

そして、通話を切る。
ンダホ
あー!シルクいたー!
ザカオ
15分間、ここで鬼ごっこってことか。
シルク
おーお前ら2人か。
待ってました!!
じゃ、早速スタートだ!!
シルクが波状の遊具から飛び降りる。
ザカオ
俺、ここ結構得意なんだよ!
そう言って、ザカオが全力で追いかける。
ンダホも、シルクの行き先を塞ごうと待ち構える。
シルク
…っ甘い!!
シルクは急ブレーキをかけて、真横に大きくジャンプする。
この公園は、シンプルに広い。
でも、シルクは撮影に利用したアスレチック広場のみで戦うようだ。
ンダホ
あー惜しい!!
ザカオ
くそっ!!
今日のシルク調子よくねぇか!?
挟み撃ちなど、ンダホとザカオも考えるが、シルクはことごとく躱していく。

私は、どこまでも身軽なシルクを見つめる。

…くそ。かっこいい…。




結果。
シルク
よっしゃー!15分経過!!
じゃあなー!!
ぜぇぜぇ言う2人を置いて、シルクは次のポイントへ向かって行った。
ちょうどその時、私を追いかけてきたらしいマサイとダーマも合流した。

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