お祝いの日、当日。
現在時刻は13時45分。
私とシルクは、家の近くの公園に来ていた。
この前、シルクの症状が出てしまったところだ。
今日は結局、12時に仕事を終わらせた。
…まぁ、その分、ここ3日は早朝出勤したのだが。
この日のために、体調も整えた。
もうすぐ、他のメンバーも来る予定になっている。
待ち遠しくて仕方がない!
私とシルクは、お祝いの日らしからぬ格好をしていた。
2人とも、トレーニングウェアを着用し、アウターとしてお揃いのライトウェイトウーブンジャケットを羽織っている。
全身真っ黒。
どこからどう見ても、今から運動をする服装だ。
そして、2人の手にはGoProが。
そんな私たちの元に、何も知らないFischer’sのメンバーが集まってきた。
公園の入り口から、私たちが待つジャングルジムまでは約25m。
楽しげに会話をしていたメンバーたちも、私たちの服装や雰囲気の異様さに、途中で立ち止まる。
ザワつく5人。
私とシルクは目配せをすると、ジャングルジムから飛び降りた。
シルクは、不敵な笑みで拍手をする。
私は、その様子を撮影する。
ブレブレかも。
ごめん。
マサイの当然とも言える疑問に、シルクは「まぁまぁ落ち着け」とサインを送る。
シルクが、私を指差す。
私は、撮影をしながら、みんなに向かってヒラヒラと手を振った。
まぁ、当然の反応だろう。
みんな、唖然とした表情だ。
いまいち、イメージできないのだろう。
まぁ、初めてなのだから当然だ。
シルクが、1枚ずつ地図を配る。
なんとなく、イメージできたようだ。
道中は頭脳戦。
各ポイントで、本格的な鬼ごっことなるはず。
私は、一人ずつGoProを渡した。
みんな、各々準備運動を始める。
私とシルクが逃げ始める。
が。
案の定、メンバーは慌てているようだ。
この状況から分かるのは、シルクが初めのポイントで全力を出してくるということだけ。
とりあえず。
最後に土手で対峙するのは、この中で一番動けるモトキに任せることになった。
残りの4人を2-2に分けて、シルクと私を追う。
シルクが待ち受けているだろう第1ポイント「大島小松川公園」へは、ここから5キロほど。
走れば20分ほどだ。
頑張れば、鬼に追いつくかもしれない。
シルクはタクシーで移動し、すでに第1ポイントに着いていた。
メンバーは、一体どんな作戦でくるだろう。
シルクは、スマホを取り出し、私の位置を確認する。
シルクと私が近くの公園をスタートしてから、今で約15分。
そんなもんでしょ。
聞こえないように、声を顰める。
私は、3人の姿が確認できる位置で、植え込みの陰に隠れた。
そして、通話を切る。
シルクが波状の遊具から飛び降りる。
そう言って、ザカオが全力で追いかける。
ンダホも、シルクの行き先を塞ごうと待ち構える。
シルクは急ブレーキをかけて、真横に大きくジャンプする。
この公園は、シンプルに広い。
でも、シルクは撮影に利用したアスレチック広場のみで戦うようだ。
挟み撃ちなど、ンダホとザカオも考えるが、シルクはことごとく躱していく。
私は、どこまでも身軽なシルクを見つめる。
…くそ。かっこいい…。
結果。
ぜぇぜぇ言う2人を置いて、シルクは次のポイントへ向かって行った。
ちょうどその時、私を追いかけてきたらしいマサイとダーマも合流した。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。