メンバーと別れ、私とシルクは家に戻ってきた。
シルクをソファに座らせ、私もその隣に座る。
虚な瞳。
もう、何ヶ月も見ていなかった。
正直、もう見ることはないと思っていた。
いつかの対談動画で、シルクが好きな女性のタイプを、
"自分を見つめ直して、謝れる人"
と言っていたことを思い出す。
今回は、喧嘩をしたわけではない。
全面的に、私が悪いのだから、自分を見つめ直すも何もないけれど。
少しでも、気持ちが届くように。
繋いだシルクの指先が、ピクリと反応したのが分かった。
シルクからの返事はない。
でも、シルクは言っていた。
遠いところにいる感覚。
浮遊しているみたいなんだ…って。
そして、言葉は、全部、聞こえているって。
私の手が、震えているのか。
シルクの手が、震えているのか。
もう、分からなかった。
正面に移動し、シルクを真っ直ぐ見つめる。
そして。
自分の想いを。
絶対に言わないと決めていた言葉を。
シルクに伝えた。
手を、握り返される。
私を見つめるその瞳は。
いつもの、大好きなシルクのものだった。
そして、私が名前を呼ぶより早く。
私の口は塞がれた。
シルクの唇によって。
そっと、目を閉じる。
もう、言葉は必要なかった。
角度を変えながら、何度も何度もキスを繰り返す。
どれぐらい、そうしていただろう。
もう、時間の流れすら分からない。
ゆっくりと離される唇。
そして、コツンと。
シルクは額を重ねてきた。
間近にある、シルクの瞳に、思わず顔が紅潮する。
シルクの、優しい声色に同調するかのように。
私の心音も穏やかな音色を奏で始める。
額を離し、シルクは真っ直ぐに私を見つめた。
だから、今まで何も伝えられなかったんだと。
シルクはそう言った。
私が、自分の意思で想いを伝えられる日を。
自分を優先できる日を。
シルクは、ずっと待っていてくれたのだ。
私のツッコミに。
ちょっぴりムスッとしながら、シルクは私を抱き上げた。
シルクは、私を膝の上に乗せ、後ろからギュッと抱きしめた。
だから…と、私の首筋に顔を埋める。
それは、昨日の行為を彷彿とさせた。
身体が、無意識にビクッと跳ねる。
身体が反応したことが恥ずかしくて、顔を腕で覆う。
私が、え?と聞き返す前に。
シルクは、そのまま私をお姫様抱っこした。
突然のことだったので、落とされないよう、無意識にシルクの首にしがみつく。
すると、いつもよりも深くシルクの香りに触れて。
私は、真っ赤になって思考もショートした。
意地悪く、耳元で囁かれる。
それだけで、ゾクっと感じてしまうほどだ。
だめだ…。
身体の芯がジンジンする感覚。
私、今。
自分の意思で、シルクに抱かれたいって思ってる。
と同時に、それを伝えた時の、シルクの反応が見たいと思った。
少し伸び上がり、シルクの耳元にそっと呟く。
その言葉を告げた瞬間。
シルクの瞳にオスの気配がブワッと広がったように感じた。
シルクは、私をお姫様抱っこしたまま、部屋を移動した。
ベッドに沿わせ、上から覗き込むように覆い被さる。
そして、先ほどよりも。
情熱的で、熱いキスをした。
少しずつ暴かれる身体に、胸は高鳴るばかりで。
私は、シルクの愛撫を受け入れた。
とても優しく、真綿に包まれるような感覚。
互いを想いやる行為は、とても神秘的なものに思えた。
私は、その日。
心も身体も。
シルクと一つになることができたのだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。