第12話

捻くれた想い
799
2023/04/27 21:00
あなた
みなさん。
ごめんなさい。
そして…ありがとう!
あの後、私たちは、騒ぎになった駅から少し離れた公園に移動した。
初めは、家に呼ぼうとしたのだけれど。
シルクに断固反対されてしまった。
ンダホ
いいんだよ!
あなたちゃんは、俺たちFischer’sにとって、大事な人なんだからw
あなた
え?
モトキ
なんたって、ウチのリーダーを助けてくれた人だからねw
なるほど。
ほんと、シルクは愛されてるなぁ。

古参のウオタミとしては、微笑ましい限りだ。

シルクの方を見ると、恥ずかしいのか、明後日の方を向いている。
可愛いなぁ、もう…。





マサイ
と・こ・ろ・でw
あなた
ん?
マサイ
2人は、いつからそんな関係になったんだよw
マサイがニヤニヤしながら、意味深に聞いてきた。
あなた
そんな、関係って??
マサイが何を言いたいのか分からず、尋ね返す。
シルクはそっぽを向いたまま。
他のメンバーは、目配せをしながら、ニタァっといたずらっ子みたいな顔をしていた。
マサイ
あなたちゃんの。ここ。
そう言って、マサイが指をさしたのは、自分の首筋。
あなた
……なぁ!?////
それだけで、何を言わんとしているか察した。

ど、どうしよう!!
なんで、みんなそんな目ざといんだよ!!//

と、心の中で悪態をつくが。
どうやら、私より背の高い人からすれば、丸見え状態らしい。
あなた
い、いや。
こ、これは、その…!!//
ゴニョゴニョと言い淀みながら、チラッとシルクを見て助けを求める。
だが。
シルクは顔を背けたまま。
無視を決め込むようだ。

このヤロウ。
マサイ
隠さなくてもいいじゃん!!
俺らにもお祝いさせてよw
モトキ
そーだそーだw
みんなの気持ちは、有難い。
ただ、それは、本当にシルクと恋人関係になっていたらの場合だ。
あなた
いや、あのー…申し訳ないんだけど。
私と、シルクは、決してそういう関係じゃないんだ、よね…。
まるで、自分から処刑台に登るような感覚。
ここから、逃げ出したいぃ…。

シルクが、何を思ってキスマークをつけたのか、分からない…わけではない。
その後の、熱を帯びた視線も。
もう、子どもじゃないから。

でも。
ハッキリと告げられたわけではないし、私も気持ちをぶつけていない。
いや。
私からぶつけることは、絶対にない。

シルクの、世界を狭めたくないから。
マサイ
は?!
ンダホ
え、ちょっと待って?
そういう関係じゃない…って。
付き合ってないってこと?
あなた
うん…。
ダーマ
じゃあ。なにか?
ザカオ
恋人でもないのに、シルクが手を出したってことか?!
あなた
いやー…えっと。
話せば、長くなるんだけども…。
私が、しどろもどろに答えたのが悪かったんだろう。
メンバーの矛先は、シルクへと向かってしまった。
モトキ
シルク!!
どういうこと!?
マサイ
お前ぇ!!
何、先に手ぇ出してんだよ!!
みんなが、シルクに詰め寄っている。
でも、シルクは知らん顔だ。
その様子が。
余計にみんなの神経を逆撫でする。

もちろん、本気で怒っているわけではないけれど。

私を心配してくれる気持ちが大きいのだろう。
ダーマ
いや、控えめに言って、サイテーだよ?
ンダホ
そうだそうだ!!
シルクらしくない!!
少しずつ、ヒートアップするメンバーに、私も焦りが生じる。

シルクに、あんなことをさせた原因は。
結局、私なんだから、と。
あなた
あ、あの!!!
私の大きな声に、メンバーの動きはピタッと止まる。
あなた
あ、私、全然気にしてないから!!
その。
男の人って、やっぱりそういうことが必要な時ってあると思うし!!
言いながら、シルクを見る。
そして、その驚愕する瞳を目にした瞬間に感じたのは…

"また、間違えた"ということだった。

私は、この空気に耐えられず。
メンバーに責められるシルクの姿に耐えられず。

決して口にしてはいけないことを、口走ってしまったのだ。

なのに。
間違えたと分かったのに。
一度喋り出した口は、止まってくれなかった。
あなた
ほんと、私って重度のキヌタミだからw
だから、むしろラッキーって…思っ…
そこまで言って、目を見開く。

シルクが。

あの、シルクが、泣いていた。

その涙と、表情を認識した瞬間に。
私の身体は咄嗟に動いていた。
あなた
シルク!!ごめん!!
ほんと、ごめん!!

…っ、ダメだよ!!行かないで!!!
シルクの瞳が、見る見るうちに、光を失っていくのが分かった。
離人・現実感喪失症候群の症状が出ていたのだ。

私の背筋が凍りつく。

私が。
私の言葉が、シルクを傷つけてしまった。
モトキ
おい!シルク!!
マサイ
シルク!!
メンバーも、呼び戻そうとしてくれる。
でも。
反応は返ってこない。
あなた
ど、しよ…。
わたしの、せいだ…。
ンダホ
いや。
俺らも言いすぎた。
2人の問題なのに…。
ンダホの言葉に、私は首を横に振る。
ギュウッと、シルクの袖口を握りしめる。

臆病な私が、全部悪い。
シルクのために。
シルクのためなら…って。
自分の保身ばかり考えているから。



私は、ギュッと目を瞑る。
あなた
………みんな。
シルクのこと、私に任せてもらっても、いいかな?
先程のように。
また間違えてしまうかもしれない。
私は、不器用な人間だから。

でも。
私のせいでシルクがこうなったのなら。
私が責任をもって、助けるよ。

シルクが、これまでそうしてくれたように。
あなた
シルク…ウチに帰ろう。

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