その会話に、思わず笑ってしまう。
その声が聞こえたのか、4人はキョロキョロと辺りを見回した。
軽く手を挙げて、私は4人の前に姿を現す。
4人とも、ポカンと口を開けている。
意外に、体力使っちゃった感じかな?
もっと、楽しませてもらわないとw
そう言って、走り出す。
ハッとしたダーマとマサイが反射的に追いかけてくる。
2人はタクシーで移動をしながら、モトキに連絡をして事情を説明する。
さぁ。
Fischer’sのブレーンがどう動くか。
楽しみだ。
第2ポイントとなる「竪川河川敷公園」。
水上アスレチック動画の舞台となった場所だ。
その遊具広場で、吊り輪にぶら下りながらケラケラと笑うシルク。
あれだけ15分間動きっぱなしだったのに。
凄いなぁ。
ニヤリと笑うシルクは、本当に楽しそうだ。
さあ、次は誰が来るか。
2人で待っていると。
軽い身のこなしで、モトキが向かってきた。
2人は、一気に身体の動きを加速させる。
シルクは、すぐに遊具の上に登り、そこから脚を使って前後に揺さぶりをかける。
モトキは、シルクの動きを予想しながら、隙が出来ないか窺っているようだ。
そして、足場が一瞬ズレたのを見逃さず、タッチをしかける。
……が。
シルクは大きく跳びはねると、モンキーバーを利用して一気に弾み、モトキと距離をとった。
そこからは、一進一退の攻防が続いていた。
10分が経過した頃、ンダホとザカオが第2ポイントに到着する。
それを目の端で捉えた私は、シルクに声をかけた。
ンダホとザカオに手を振りながら、次の目的地を告げた。
颯爽と走り出す。
もちろん、ンダホとザカオは追いかけてこない。
マサイとダーマはどうしたかな?
…先で、待ち伏せているのかも。
先程よりも周囲を気にしながら、私は第3ポイントを目指した。
その頃、シルクは。
どうやら、勝利を収めたようだ。
ただ、その喜びに浸る時間はない。
すぐにその場を離れる。
現在、鬼ごっこ開始から1時間15分が経過していた。
シルクは、また、タクシーに乗って行ってしまった。
残されたメンバーは、各々連絡を取り合う。
ここから先は、3時間という制限時間も気になってくるところだ。
私は、走るペースを少し上げた。
できれば、10キロ40分ぐらいで走りたい。
冒険コーナーで、2人はシルクが来るのを待つ。
ここも、Fischer’sがよくアスレチック鬼ごっこをした場所だ。
2人が作戦を練っている間に、私は東綾瀬公園に到着した。
さ。いっちょ頑張りますか!
急な私の声に、2人は驚いて振り向く。
と同時に、私は2人の目の前を走り抜ける。
嘘だろー!という、マサイの絶叫が響き渡った。
当初の予定では、15分間鬼ごっこの全てをシルクに任せることになっていた。
でも。
シルクには、最後の土手で全力を出して欲しかったから。
私がシルクにお願いしたのだ。
元長距離ランナーの私は、正直瞬発力にはさほど自信はない。
マサイやダーマにだって劣るだろう。
私は遊具での鬼ごっこに早速見切りをつけ、多目的広場へ移動する。
ずーっと同じ場所にいると、挟み撃ちなどされやすくなる。
遊具が多い場所でもきっと不利になるから。
だから私は。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。