第15話

嬉しい知らせ
701
2023/04/30 21:00
それから、私たちは色んなことを話した。
お互いの好きなところ。
今、ハマっていること。
趣味や特技など。

話しながら、改めて。
私は名前以外の情報を、全く知らせていなかったのだと、思い知った。
シルク
よく考えたらさ。
すごくね?
何の情報もなく、予備知識もなく、俺は、ありのままのあなたを好きになったんだぜ?
あなた
そう…だね。
シルクは、なぜか自慢げだ。
シルク
そんで!
あなたはもっとすごい!
あなた
え?
シルク
あなたはさ。
Fischer’sのシルクロードを、ずっと応援してくれてたわけじゃん?
あなた
うん。
かなり、長くシルクロードを見てきた。
自分と同世代の人たちが、バカやって楽しんでいる動画。
自分とは違う生き方に、憧れた。
シルク
でもさ。
俺たちの出会いって。
あなたの知ってるシルクロードじゃ、なかったろ?
確かに。シルクの言う通りだ。
私の家の前で蹲っていたシルク。
動画で見てきた姿とは、180度違うシルクだった。
シルク
マイナスからのスタートだったから、幻滅されたっておかしくなかったはずだ。
幻滅?
そんなの。
あなた
するわけない!!
私は、聞き捨てならないとばかりに、大きな声で否定する。

どんな一面だって。
全部シルクの一部なのだ。
受け入れられないわけがない。
あなた
私のシルクに対する気持ち。
なめないでよね。
シルク
フハッw
私の言葉に、シルクは思わず吹き出す。
そして、柔らかく微笑んだ。
シルク
やっぱ、すげーよw
指を絡めながら、ギュッと手を繋ぐ。
そして、その指に、シルクは軽くキスを落とした。
シルク
もう、離せねーから。
覚悟しとけよ?w
あなた
うん!
シルクこそ。
2人で笑い合う。
ここまで、色んなことがあったけど。
こうして、シルクと気持ちを通わすことができた。
私は、この上ない幸福に満たされていた。
ンダホ
あ!シルクから着信!
マサイ
マジ!?
同日昼前。
マサイの家で編集中のンダホに、シルクから電話がかかってきた。
少し、緊張した面持ちで、ンダホは通話ボタンを押す。
ンダホ
もしもし?
シルク
おー俺俺。
ンダホ
シルクー!!
戻ったんだね!!
マサイ
良かったなぁ!!
いつものシルクの声に、2人は安堵する。
ンダホ
あなたちゃんも、大丈夫そ?
ンダホの質問に、シルクは、
うん、ん…っ!
と、軽く咳払いをする。
ンダホ
……シルク?
シルク
…おかげさまで!
あなたと、恋人になれました!!
ンダホ
えーーーーー!!!!
良かったねー!おめでとう!!
マサイ
マジかよ!!朗報じゃん!!
シルク
…心配かけて、悪かったな。
ンダホ
いいんだよー!
マサイ
素直なシルク、ちょっと気持ち悪いなw
シルク
うっせ。ばーか。
悪態をつきながらも、きっと。
シルクの表情は緩んでいるに違いない。
その様子が容易に想像できて、ンダホとマサイは顔を見合わせて笑った。
ンダホ
あ!みんなでお祝いしよーよ!
マサイ
いいな!それ!
シルク
なんで、そーなんだよw
ンダホ
ホントに、俺たちも嬉しいんだって!
もちろん、他のメンバーもねw
シルクが、自分から他人を求めたのは初めてだったから。
冷静さを欠いて、何も考えられなくなって、それでも譲れないもの。
シルクにとって、それが彼女だったんだ。
マサイ
こっちでスケジュール調整して、候補日後で連絡するからな!!
あなたちゃんの都合も確認しといて!
ンダホ
じゃ、あなたちゃんにもよろしくねw
シルク
はいはい、了解。
シルクとの通話が切れた後、ンダホとマサイは思わずガッツポーズをしたのだった。
あなた
あ、報告終わった?
リビングから、私はシルクの様子を伺った。
シルク
おう。
あなたと上手くいったって言ったら、お祝いしたいってさ。
めんどくせーと言いつつ、シルクの口角はいつもよりも上がっていた。
嬉しいくせに。
あなた
素直じゃないなーw
そんなシルクの表情に、私はケラケラと笑う。
シルク
うっせw
あなた
で、そのお祝いの日程を決めたいってとこ??
シルク
アタリw
2人でスケジュールを確認する。
シルクは、案件動画以外なら調整できるようだ。
私も、夜ならいつでも大丈夫だが…。
できることなら、次の日が休みの方がありがたい。
あなた
じゃあ、4日後の金曜は??
シルク
いいんじゃね?
一回聞いてみるわ。
シルクが、すぐにラインでメッセージを送る。

と。
ンダホ
俺とマサイはオッケーw
モトキ
俺も大丈夫だよー。
あ、シルクおめでと!!
ザカオ
俺も行けると思う!
んで、シルク!良かったな!
ダーマ
了解だぜ。
おめっとさん。
みんな、上手く時間を調整してくれたようだ。
それぞれのメッセージから、どれだけ、シルクが愛されているか伝わってくる。
あなた
幸せ者w
シルク
…そーだな。
珍しく、素直な反応。
それほど、みんなの気持ちが嬉しかったのだろう。

私のことも助けてくれたし。
信じて、シルクを任せてくれた。
本当に、いい仲間だと思う。

ふと、メンバーに、恩返しがしたいと思った。
そして、私にどんなことができるか考えてみる。

料理…プレゼント…手紙…
しかし、どれも全くピンとこない。

なかなかいい案が思いつかず。
その場で唸っていると、シルクが首を傾げて覗き込んできた。

あ!!!
そうだ!!!

一つ、閃いた私は、シルクにある提案をした。
あなた
……で、……ってのは…?
シルク
へーw
いいんじゃね?w
シルクには、
「恥ずい!!」とかって反対されるかと思ったけど。
どうやら、オッケーのようだ。

メンバーみんなが、楽しめ。
そして。シルクの思いが、伝わる。
そんな恩返しができたらいいな。

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