第10話

【第一章】第10話
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2021/01/31 15:48
それから数日後

俺は精神的にも肉体的にも疲れてしまい
来生からも他のナースからも大丈夫かと
言われるようになった。
天堂
天堂
七瀬が早く起きてくれないと
俺も身体が壊れそうだ....
俺を置いて行くなって...七瀬
七瀬の手を握りしめる
トクトクと刻む心音に何度、安堵したことか
天堂
天堂
お前は勇者なんだろ?
その時、握っていた手が微かに動いた気がした。
気のせいかとも思ったが俺は話しかける。
天堂
天堂
七瀬!?七瀬?
目を開けた七瀬。

やっと戻ってきてんだ。
嬉しさが込み上げる。
咄嗟にナースコールを押す
天堂
天堂
七瀬!.......分かるか?
よかった!
七瀬
七瀬
........あの?どちら...様ですか?
その一言で俺は思い出した。

医者A 意識障害が出るかも知れません。
天堂
天堂
っ!?七瀬?
自分のことは分かるか?
七瀬
七瀬
.....はい。佐倉七瀬ですよ。
天堂
天堂
じゃあ俺のことは?
分かるか?
七瀬
七瀬
......?すみません。
どこかでお会いしましたか?
七瀬は俺のことを覚えていなかった。
そこに担当の医師が入ってきて、検診する
担当医から逆行性健忘症だと言われた。
事故や何らかの原因で脳の機能が損傷し、
それを発症した以前の記憶が曖昧になる症状
要するに記憶喪失みたいなものだ
すぐに記憶が戻ったりする事もあるがもう一生記憶が戻らない事もあるらしい。

そこに循環器内科の皆がきた。
沼津
沼津
おい!勇者!
よう帰ってきたな!
待ってたで!
七瀬
七瀬
....えと?すみません。
記憶がなくて。
どちら様ですか..?
皆   !?
沼津
沼津
嘘やろ?記憶が?
天堂
天堂
本当だ。
皆 ...........
根岸
根岸
こんにちは!佐倉さん
私達はこの病院のナースです
七瀬
七瀬
..........そうなんですか...
すみません。....どうしても
思い出せなくて...
天堂
天堂
じゃあ看護師だった事も忘れたのか...?
七瀬
七瀬
....なんとなく...ですけど
看護師学校に行ってたのは覚えてます。
私この病院で働いてたんですか?
根岸
根岸
.....そうですよ。循環器内科のナースとして
七瀬さんは働いていました。
七瀬
七瀬
そうだったんですか...
皆 .......
沼津
沼津
まぁ!勇者が起きた事はいい事やし
皆もそんな顔せんと!前向きに考えていこ!
じゃあまず勇者が思い出してくれるよう
自己紹介するか!
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それから全員が自己紹介をした
七瀬も最初は戸惑っていたが話を聞いているうちに慣れていった。
七瀬
七瀬
これから...頑張って思い出すので
よければ時間あるときでいいので
ここに来たときのこと教えて下さい。
酒井
酒井
もちろん!
焦らずゆっくり思い出していこうね
沼津
沼津
そうやな!
根岸
根岸
じゃあ私達はこれで
さぁ皆仕事に戻りましょう
酒井
酒井
じゃあまた今度!
俺も一緒に病室を出た。

‪✂︎‬~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
来生
来生
天堂。さっき佐倉ちゃんに会って
きたんだけど...俺のこと一個も
覚えてなかったんだけど....どうゆうことだ?
天堂
天堂
......記憶喪失みたいなものだって
この病院で働き始めたときからの
記憶が曖昧になってるらしい。
来生
来生
....やっぱりそうか。
天堂
天堂
.....来生。
来生
来生
どうした?
天堂
天堂
俺と七瀬の関係のこと七瀬には
黙っててくれるか?
来生
来生
なんで....?
天堂
天堂
これから七瀬が今までの記憶を
思い出すことはないかもしれない。
そのときあいつはあいつらしい人生を
送って欲しいと思ってる。
来生
来生
でも!そんなのって...
天堂
天堂
.....もちろん諦めた訳じゃない。
もう一度俺のことを好きにさせてやる
七瀬が俺に一生懸命思いを伝えてくれて
俺を振り向かせて変えてくれたみたいに
俺も七瀬を振り向かせてみせる...
来生
来生
......そうか。
でもきっと佐倉ちゃんなら
思い出してくれると思うよ
天堂
天堂
といいな...。
あと...七瀬との関係知ってる奴にも
言っといてくれ...
こんな話、小っ恥ずかしくて
何度も出来ないからな
来生
来生
ふっ...分かったよ。
来生にはああ言ったけど、俺は自信がなかった。
七瀬はまた好きになってくれるとは限らない
もしかしたら他のやつを好きになるかもしれない。その時、俺は受け入れられるんだろうか...

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それから2週間後、七瀬はリハビリも終わり
退院できることになった。
俺が休みをとって七瀬を家まで送ることにした。
七瀬の家は同棲したてで新しい家を探そうと
していた所だったから借りたままにしていたけど
まさかこんな事になるとは思ってもみなかった...

七瀬
七瀬
天堂先生。わざわざ送っていただいて
ありがとうございます!
天堂
天堂
いいよ。行こう
七瀬
七瀬
....あの、今更なんですけど先生
がどうして送ることになったんですか..?
天堂
天堂
それは...家が隣だったからだ
七瀬
七瀬
....へぇ〜
天堂
天堂
その....このマンションは病院関係者が
安く借りられるから多いんだ。
それでたまたま隣同士に。
七瀬
七瀬
.......なるほど!
そうだったんですね!
✂︎‬~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

七瀬の家に着いた。
天堂
天堂
自分の家、思い出したか..?
七瀬
七瀬
....なんとなくですけど
懐かしい感じはします...
もしかしたら思い出すかもと淡い期待していた
からやっぱり思い出してくれないと悲しいな...
天堂
天堂
...そうか。
天堂
天堂
これ、家の鍵。
七瀬
七瀬
...あっ、ありがとうございます!
天堂
天堂
じゃあ俺は、これで...
七瀬
七瀬
...えっと、待って下さい!
天堂
天堂
七瀬
七瀬
せっかく送っていただいたので...
一緒にご飯でもどうですか?
.....って、家になんもないんだった
天堂
天堂
...分かった。
それなら俺の家にこい。
七瀬
七瀬
え?
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七瀬
七瀬
...お邪魔します!
天堂
天堂
ああ
七瀬
七瀬
(...なんだかさっきより懐かしい感じ
がするなんでだろ...?)....っ痛!?
七瀬が頭を抑える
天堂
天堂
おい!大丈夫か!?
七瀬
七瀬
....大丈夫です。
記憶が戻りそうなのかも...!
でも...肝心なところが思い出せなくて...
天堂
天堂
...そうか
七瀬が思い出しそうになってることに
嬉しさを覚える。
七瀬
七瀬
そのうちきっと全部思い出しますから
天堂
天堂
だといいな。
まぁ取り敢えずそこに座ってろ。
七瀬
七瀬
え?
天堂
天堂
俺が何か作る。
七瀬
七瀬
いやいや、私から誘ったのに...
なので私が作りますよ!
天堂
天堂
病人なんだからじっとしてろ
七瀬
七瀬
....ありがとうございます!
天堂は慣れた手つきで料理する
七瀬
七瀬
料理お上手なんですね!
天堂
天堂
暫くの間は適当に済ませてたんだけど
それじゃあ、ある子に怒られるぞって
友達から言われて作るようになった。
七瀬
七瀬
へぇー...
ある子って彼女さんですか?
天堂
天堂
....婚約者だ。
そいつ俺のことを勝手に
置いていきやがってな
七瀬
七瀬
もしかして...別れたんですか?
天堂
天堂
いや。まだずっーと待ってる
あんまりにも長く待たせるから
早く帰ってきて欲しいもんだ。
七瀬
七瀬
....そうなんですね。
早く帰ってくるといいですね!
天堂
天堂
.....そう..だな。
それから久しぶりに一緒にご飯をたべた。
まるであの頃の七瀬が帰ってきたみたいだった。
七瀬
七瀬
長居してしまってすいません...
凄く美味しかったです!
天堂
天堂
よかった。
七瀬
七瀬
よければ...また食べにきても
いいですか?
天堂
天堂
ああ。もちろん。
七瀬
七瀬
嬉しいです!
じゃあそろそろ失礼します。
そう言って七瀬は自分の部屋にかえっていった。
俺は一人になった部屋に戻り泣いた。
最近は涙もろくなってしまって
すぐに泣いてしまう


七瀬が隣の部屋にいる
帰ってきている
それだけのことで涙が出る

いつか七瀬は思い出すんだろうか
これから思い出さなかったら
どうなるんだろう...
また好きになってくれるだろうか

帰ってきてくれて嬉しい気持ちと
不安な気持ちで心の中でいっぱいになる。


.....あの時、七瀬が俺を変えてくれて、
俺が七瀬を好きになったように
今度は俺が七瀬を振り向かせてみせる...


そう心に決める。

✂︎‬~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

七瀬side

先生が婚約者のことを話すときなぜだか
嬉しそうな悲しそうな顔をする。
その顔が目に焼き付いて離れなかった。
その顔を思い出すとなぜだか胸が苦しくなった。
これはどうしてなんだろう...

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