第16話

16(晴人side)
701
2021/04/02 03:00
晴人
晴人
ポストを開けたら大量の封筒が入っていた。
晴人
晴人
(昨日確認したのになぁ…)
両手にいっぱいのそれらを部屋で眺めた。不思議なことに、差出人も宛先も書かれていなかった。直接投函したということだろうか…そう考えて少し身震いした。
晴人
晴人
きもちわる…
こういうのって開けない方がいいんだろうか。でもそれで変なことに巻き込まれてもやだしなあ。
迷っていたらインターホンが鳴った。
晴人
晴人
はーい
達也
達也
ハル〜
予想はしてたけどやっぱり達也くんだった。あんなこと話しといて顔合わせづらいし、できれば二人きりにはなりたくないんだけど、達也くんはほぼ毎日来る。
暇なのかな、とか失礼なことを考えながら玄関を開けようとして、テーブルの上に散らばった封筒たちを思い出した。少し迷って、棚の中に全部突っ込んだ。
晴人
晴人
おはよう
達也
達也
おはよ
晴人
晴人
相変わらず暇人だね
達也
達也
失礼だな
晴人
晴人
うちに来たってなんもないよ
達也
達也
お前に会いたくて来てるからいいんだよ
晴人
晴人
なにそれはっず
笑顔で上がり込んでくる達也くんにため息が漏れた。彼の言葉は嘘だ嘘だと自分に言い聞かせるのももう飽きた。早くやめてほしい。そうとは知らず達也くんはしつこく話しかけてくる。
達也
達也
ため息なんかしてどうしたんだよ、なんかあったの?
晴人
晴人
達也くんがうざいからだよ
達也
達也
それはどうにもできないな〜
そう言って笑いながらのしかかってくる。達也くんってこんなキャラだったっけ。
達也
達也
そうだ、太我に謝った?
晴人
晴人
……………
達也
達也
わかりやすいなお前、早く謝れよ
晴人
晴人
……だって、ほんとのこと言っただけだし…
達也
達也
ハル
じっと見つめられて思わず目を逸らした。達也くんの真っ直ぐな目が苦手だった。この目で好きと言われるたびになぜか足元がぐらつくのだ。
達也
達也
太我は本気でお前を心配してるんだよ
晴人
晴人
………頼んでない
達也
達也
子どもか
晴人
晴人
関係ないじゃんほっといてよ
達也
達也
関係ないことないだろ
晴人
晴人
関係ない
言い切ったら達也くんはやっと黙った。悲しそうな顔で俺を見てきたけど無視した。
それからはずっと無言だった。それでも達也くんは俺のそばから離れなかった。
帰り際、達也くんは不意に口を開いた。
達也
達也
…ハル、なんかあったら言えよ
晴人
晴人
はいはい、またね
もう聞き飽きたセリフだった。一瞬、ほんとに一瞬、あの大量の封筒のことが頭に浮かんだけど言わなかった。達也くんの言葉なんか信じない。頼らない。俺は一人でいい。
言ったって、俺なんか助けてくれるわけないんだから。

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