達也くんはすごかった。
うちにカメラをつけて、証拠を揃えて、数日分の封筒とともに警察に出した。犯人は何度も家に上がり込んでやりたい放題してたみたい。痕跡を隠されてたから気づかなかっただけで、俺が家を空けるたびに来ていたようだ。最悪だけどそのおかげで証拠が撮れて立件できた。あんなに悩んでいたのに、達也くんに話してから一週間で犯人は捕まった。犯人が捕まるまで達也くんちに泊めてくれて、だから怯えることもなかった。
そう言って抱きしめられた。前は何も感じなかったのに、達也くんにぎゅっとされるとドキドキするようになった。それにすごく怖かった。この温もりを失うのが怖かった。だから遠ざけていたのに、今は離れることすら怖い。
達也くんは何か言いたげだったけど、俺の頭を撫でて「そっか」とうなずいた。
ほんとはもう少し達也くんちにいたかった。でもこれ以上一緒にいたら、余計離れられなくなると思った。
次の日、報告も兼ねてメンバー三人で打ち合わせをした。太我は俺を見るなり呆れと安堵が混ざったような顔をした。
あんなに俺は悪くないと思っていたのに、なぜかスルリと謝罪の言葉が出た。太我はびっくりしてから気まずそうに頭をかいた。
そう言って遠慮がちに俺の頬に触れた。すぐに腫れはひいたし、もうすっかり元通りなんだけど、それでも太我は悲しそうにもう一度謝ってきた。
太我の手から伝わる体温。二人の優しさはもう疑いようがなかった。久しぶりに感じる愛情は、ある意味であのストーカーよりも俺を怯えさせた。これを失ったらどうしようと、久しく感じることのなかった不安が俺の頭を満たした。夜布団に入ると、その不安が俺を包んで眠れなくなった。
二人の愛情が本物だとわかった今、今度はその愛情が気まぐれなんじゃないかという疑いが生まれた。いっときの気まぐれで優しくしてるんじゃないか、どうせすぐ俺なんかどうでもよくなる、だって優しくされるだけの価値が俺にはない。そんな汚い感情でいっぱいだった。ずっとなんて信じれないよ。失って傷付くのは俺だもん。
俺は首を振り続けた。優しくされるたびに恐怖が大きくなる。
ごめんね、怖いのは二人なんだ。最低だよね。俺だけが最低で真っ黒だね。ごめんね。
こんなに優しい二人を信じれない、自分が嫌いでしょうがない。