最初に疑問に思ったのはいつだっただろう。
二人は俺のファンばかり悪く言う。頭悪いとかフィルターかかってるとか。それって俺自身にはそんなに魅力がないから、そういう人じゃないと俺なんか推さないってこと?
頑張ったことを認めてもらえない。「歌だけ」「声だけ」って、もう何回言われたんだろう。わかるよ、俺いじられキャラだし。いじられキャラはバカにされるから面白いんだよね。
俺があげたプレゼントも、二人はあんまり嬉しくなかったんだね。俺一生懸命考えたよ。何あげたら喜んでもらえるかなって、二人が大好きだからいっぱい考えたよ。でも二人にとっては値段の方が重要なんだね。
ゴミとか死ねとかダサいとか、そういうこと言われるのも俺ばっか。これ以上言われたら、俺寂しくてほんとに死んじゃうよ、とは言えないけどさ。ちょっとだけしんどかった。
二人がほんとに俺のこと好きなのかわからなくなった。動画でいじるなとは言わないよ、そういう役割だもん。でもファンが見てないとこでくらい優しくされたかった。俺だって大事にされたかった。
嫌われてるのかな、やだなって、そればっかりになった。
もう気にするのもだるかった。愛されてると思ってたから、嫌われるのが怖くてしょうがなかった。ずっと体が重かった。息が苦しかった。
でも、嫌われてるってことは、もうこれ以上気にしなくていいってことだって気づいたの。嫌われてる方が楽だって。
愛されてると思ってるから嫌われるのが怖いなら、最初から嫌われてるって思ってれば、怖くもなんともない。嫌いが普通になればいいの。そしたら嫌われるかもって怖くなることはない。嫌われてるのかなって悩むことも、嫌われたくないって疲れることもない。
だって最初から嫌われてるんだもん。
だからいつかの夜、寝る前に唱えたの。
みんな俺のことが嫌い。はい解決。
朝起きたら、あれだけ俺を苦しめていたモヤモヤは綺麗さっぱりなくなっていた。
その日から、俺が誰かからの愛情を感じたことは、一度もない。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!