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第19話

19(晴人side)
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2021/04/06 15:12
太我
太我
ねえ
撮影からの帰り道、急に太我に話しかけられた。
喧嘩以来プライベートじゃほとんど話してなかったから、びっくりした。
晴人
晴人
え…なに?
太我
太我
なんかあったの
それは俺がずっと求めていた言葉だった。まさか太我に言われると思ってなかったから、すぐには言葉が出なかった。俺の返事を待たず太我は続けた。
太我
太我
達也くんが心配してた
晴人
晴人
…え……
太我
太我
どんどん元気なくなってるって。でも話したがらないからって…達也くんに迷惑かけんなよ
太我の言葉が胸に刺さった。太我は別に俺が心配なんじゃないんだ。
太我
太我
お前そんな悩むような奴じゃないだろ
何それ、誰が決めたの。なんで太我が俺のこと決めるの。そりゃ悩みなんかないようなフリするよ。だってみんなが思う矢野晴人って常に笑顔でしょ。それに俺の話なんかどうせ聞いてくれないじゃん。いつもそうだった。怒ったって笑いに持ってかれる、行動で訴えたって気づいてくれない。
深い意味はなかったかもしれない。でも余計言えなくなった。言っちゃ俺らしくないんでしょ?
晴人
晴人
そうだよ、何もないよ、達也くんが勝手に勘違いしてるだけ
太我
太我
……あっそ
太我を置いて歩き出した。ただただ虚しかった。
頭が急速に冷めていく。久しぶりに冷静になれた気がした。言わなくて良かった、やっぱり一人でなんとかしよう、そう思ったとき不意に肩を掴まれた。
太我
太我
ねえ
晴人
晴人
なに、まだなんかあんの
太我
太我
俺も心配だから
晴人
晴人
は?
太我
太我
お前が心配
達也くんと同じ真っ直ぐな目だった。動揺している俺を置いて太我は自分の家の方へ歩いていった。
晴人
晴人
……何それ…
頭がグラグラした。二人とも俺が心配なんだ……
無意識に、足が達也くんちの方を向いた。

やめろよ
助けてくれるわけないよ

頭の中で誰かがそう言った。

頼ったって無視されて傷つくだけだ

足が止まった。そうだよ、散々達也くんを無視したのに。いまさら頼ったって助けてなんかくれないよ。
晴人
晴人
(でも、)
達也くんの言葉を思い出す。達也くんは、辛かったら言えって言ってくれた。

それだってお前は無視しただろ

そうだけど、でも……
いつのまにか達也くんちの前に立っていた。
達也くんはリーダーで社長だもん。こういうことがあったら、社長に言うのは社員として当たり前だよ、そうでしょ。バンドに被害がいく前に報告する義務があるんだ。別に頼ってるわけじゃない。これは違う。
言い訳しながらインターホンを押す。
達也
達也
ハル?どうしたの?
達也くんはすぐ出てきて、家に入れてくれた。
晴人
晴人
達也くん…あの、
達也
達也
うん
晴人
晴人
えっと……迷惑行為?受けてて、困ってて
達也
達也
そうなの?
達也くんはしばらく無言になった。
途端に頭の中の声が大きくなった。

だから言ったのに
頼ったって意味ないよ

目を瞑る。違う、別に最初から頼ってたわけじゃない。だから傷つくことなんてない。
晴人
晴人
ごめん、やっぱ自分でなんとかするからいい
達也
達也
え?なんでだよ
晴人
晴人
だって、
達也
達也
お前一人じゃどうもなんないだろ
晴人
晴人
でも…
達也
達也
言ってくれてありがとな
達也くんの声が響いた。うるさかった誰かの声が掻き消えた。
なんでありがとうなんだろう。意味がわからない。迷惑なだけだと思う。最近の達也くんは意味わかんないことばっかりだ。
達也
達也
ハル?
何も言わない俺に、達也くんが戸惑いの声をあげた。でも俺は何も言えなかった。声が引っかかって喋れなかった。なんでか目頭が熱くなった。
達也
達也
ハル、大丈夫?……ハル?
大丈夫と言おうとしたのに、微かに空気が漏れただけだった。
その場にしゃがみ込んだ。動けなかった。勝手に涙が出てきた。達也くんは驚いて、それから何も言わないでぎゅっとしてきた。
晴人
晴人
やめて
頑張ってやっとそれだけ言えた。でも達也くんは離してくれない。
晴人
晴人
苦しい、達也くんのせいだ
達也
達也
うん、ごめんね
晴人
晴人
離して
達也
達也
ごめんできない
晴人
晴人
離して
あんなに言いたかった「助けて」はもう言えなかった。達也くんの温かさが急に怖くなって、必死に拒んだ。それでも達也くんは俺を離さなかった。涙が止まらなかった。
達也くんは、俺が泣き止むまで、ずっと抱きしめてくれていた。