ハルが帰ったあとも太我と話し合った。
言葉をそのまま受け取るなら、ハルが真に恐れているのは好きという言葉でも嫌いという感情でもなく、好きから嫌いという変化のはずだ。ハルは突然愛情を失うのが怖いんだ。だから最初から何も持っていないと思い込もうとしているのだろう。それなら、ハルが怖くなくなるくらい何度も好きだと言えばいい。ハルが俺たちを信じられるくらい気持ちを伝えれば、以前のあいつに戻る、はずだ。
そんなことを話しながらも、ハルの真意は未だにわからなかった。
太我もそう呟いた。
少し不満気な太我を見ながら、俺は考えた。
そういえば、俺らからハルに気持ちを伝えることって、あまりなかったかもしれない。ハルはあんな性格だから、普段から俺たちのことが好きだと言葉でも態度でも示してくる。でも俺たちはどうだっただろう。何度も好きだと言ってくれるハルに、好きだと返してあげたことが果たしてあっただろうか。
これからはちゃんと言おう。好きだと、大切だと、ちゃんと伝えよう。そう取り決めて太我は家に帰った。
誰もいなくなってガランとした室内を見渡した。ハルの笑い声が頭に響いた。いつも聞いているはずなのになぜか懐かしくてたまらなかった。
名前を呼んだ。返事がないことはわかっていた。それでも呼びたくなった。
今すぐうちに来て、笑ってくれないか。
辛いのはハルなのに、そんなことを求めてしまう俺は、きっとリーダー失格だ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。