第26話

最終話
821
2021/04/21 08:12
ハルとたくさん話をした。情けないことに、お互い口から出るのは「ごめん」ばかりだった。悩んでるのに気づけなくてごめんとか、何度も酷いこと言ってごめんとか、それから目を合わせてどちらからともなく笑った。
達也
達也
なんだよ俺ら、謝ってばっかやん
晴人
晴人
ほんとだね
達也
達也
せっかく両想いになったのに
ハルを抱き寄せたら、恥ずかしそうに、だけどすんなり俺の腕の中に収まった。
晴人
晴人
両想い…
俺の手をきゅっと握り、ハルが嬉しそうに呟いた。それが愛しくて堪らなくて、ハルの髪に頬擦りした。
達也
達也
なあ、好きって言ってよ
晴人
晴人
好き
達也
達也
俺も好きだよハル。大好き
晴人
晴人
…うん
達也
達也
泣くなよ
晴人
晴人
うん……
そう言いつつ、ハルが俺の気持ちを受け止めてくれるのが嬉しくて俺も泣いていた。ハルの目からはとめどなく涙が溢れていたけど、もう目を真っ暗にすることも辛そうに顔を歪めることもなかった。今ハルの瞳にはちゃんと俺が映っている。俺の声が届いている。そしてハルが笑っている。
十分すぎるほどの幸せに打ち震えた。今までの全てが報われた気分だった。
やっと涙を流し尽くしたハルは、今回の戦犯に電話をかけた。
太我
太我
『もしもし?どうだった?』
そいつはすぐ電話に出て、なんの悪びれもなく聞いてきた。
晴人
晴人
お前ふざけんなよ!
太我
太我
『なんのことだかさっぱり』
晴人
晴人
嘘つき!告白とか全然されてないじゃん!
太我
太我
『良かったじゃん』
達也
達也
お前変な嘘つくなよ
太我
太我
『いやいや、言っとくけどああでもしなきゃハル絶対動かなかったから』
太我の言葉にハルは声を詰まらせた。何も言い返せないんだろう。悔しそうに口を尖らせ、「達也くんに任せるって言ったくせに」と糾弾した。なんのことだろうと疑問符を浮かべる俺の横で、ハルは続ける。
晴人
晴人
結局口出してきてさ
太我
太我
『任せるとは言ったけど手伝わないとは言ってないし』
晴人
晴人
屁理屈じゃん!
太我
太我
『うるせーな、俺のおかげでくっつけたくせに文句言うなよ』
晴人
晴人
くっ…くっついたなんて、
太我
太我
『言われなくてもわかるから。じゃあお幸せに!』
そんなセリフとともにぶつりと電話が切れた。呆気に取られながら携帯を見つめるハルが面白くてつい吹き出してしまった。
達也
達也
お前ほんとになんでも信じるな
晴人
晴人
だってこんなのわかんないよ
達也
達也
一番大事な言葉は全然信じないくせに
晴人
晴人
………!……ごめん…
達也
達也
冗談だよ
ハルの手からスマホを奪い取った。ソファにスマホを放り、ハルの両手と自分の両手を絡める。ハルの顔が赤く染まった。
達也
達也
…もう大丈夫なの?
俺の問いに、ハルはほんの一瞬不安そうな顔をしたが、すぐに俺を見つめ微笑んだ。
晴人
晴人
…まだ怖いけど……でも平気。怖くなくなるまで達也くんに聞くから
達也
達也
なんて?
晴人
晴人
俺のこと好き?って
そうして、忌避し続けた言葉を自ら口にする。
晴人
晴人
だからね、これからも…いっぱい好きって言ってね
達也
達也
うん
頼まれなくたってうざいくらい言うつもりだ。ハルがいつか、心の底から俺を信じられるように。誰かからの愛情を、もう怖がらないように。
達也
達也
いくらでも言うよ。黙れって言われたって言うよ。ハルが大好きだからな
ここまで来るのにだいぶ遠回りしてしまった。だけど、ようやくハルの手を掴めた。
約束する。これから先、お前がどれだけ不安になったって、俺が必ず隣で支える。好きと言う。
晴人
晴人
達也くん…あのね、大好き
達也
達也
俺も、大好きだよハル
だからずっと、俺の隣にいてね。

ハルがどこにも行かないように抱きしめた。こいつの眩しい笑顔も、キラキラした瞳も、大好きと笑う声も、俺はもう絶対に離さない。

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