合唱コンクール。
ほとんどの高校でやる行事。
1.2.3年生で10クラスずつあるから、学年ごとに1.2位を決めて、最後にその6クラスの中から優勝、準優勝、3位を決める。
もちろん、私たちのクラスが狙っているのは学校内での優勝。
…
私のクラスが選んだ曲は…
「風になる」
文系で男子が少ないから、女子のきれいな声とハーモニーを意識しての練習が始まった。
初めはやる気のある人ばかりじゃなくて
衝突もあった。
でも、K先生は特に口を出すこともなく
ただただ黙って見守ってくれていた。
生徒思いで、行事を大切にしてくれているからこそだと思う。
これは生徒たち自身で乗り越えると信じてくれていた気がした。
そんなことばかり考えていた私は相当重症だ。
…
そして、なんとか練習を重ね
形になってきた。
どんなときもあっという間に時間は過ぎるもので…
早いことにもう本番。
それなりにいい形に出来上がってきたからこそ
すごく緊張していた。
…
本番当日。
またK先生への好きが増える出来事があった。
いつものように登校し、
教室に入った私。
黒板に…こう書かれていた。
「飴あげるから頑張れよ」
たった一行。
でも
その字を見て、すぐに誰の字かわかった。
K先生だ。
教室を見渡して見ると…
全員の席に飴が2つずつ置いてあった。
一体この人はどこまでイケメンなんだ?
今まで決してクラスで口を出すことが無かった先生。
本番当日にそんなイケをかましてくるなんて思ってもいなかった。
ずるい。
ずるすぎる。、
こんなの好きになるしかないじゃないか…
私はこの時、
今日が本番であるという緊張をすっかり忘れていた…
…
そんな、私には神々しく見える飴を食べて臨んだ本番。
結果は
見事学年で優勝。
総合では3位だった。
でも、3位の結果が発表された時、
やった!!!!!!
というより
あぁー…3位かぁ…
という反応の人の方が多かった。
そんな様子を見て、
K先生が
「おまえ達が優勝を狙っていたからこそ、3位という結果が悔しいのはすごく伝わってきた。でも、僕はこのクラスの担任で君たちをすごく誇りに思う。」
そう言ってくれたんだ。
みんなこの先生の言葉に救われたと思う。
やっぱり、先生は不思議な力を持ってるなぁ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!