くっ…
足音は近づいてきている…
だけど、まだ遠い…
二人とも!
部屋まで走って!
は、走るの?
走って!
は、はい!
タッタッタッ…
はぁはぁ…
…
…
わっ!
ドタ!
ん…
えっ?誰!?
いやぁぁぁ!
あ、あの…
嫌だ…嫌だ…
ごめんなさい…ごめんなさい…
お願い…殺さないで…
え、えっと、大丈夫?落ち着いて。
え…?
大丈夫?
あ…うん…
…(この子は一体?)
あ、あの、あなたたちは誰?
私たちは、気づいたらここにいて…
一緒にいた兄がいなくて、探していたの。
ドアを開けようとしたら、足音が聞こえて…
私たちをここに連れてきた犯人かもしれないと思って、逃げていたの。
そして、あなたと会った。
お兄さんがいなくなったのですね…そして、知らないうちにここに連れてこられた…
私も同じです!
私は「後藤 先音」と言います。
私も外に出る道を探していました。
そしたら、足音が聞こえてきたのです。
怖くて、逃げていたら、あなたたちが飛び出してきて。
先音さん、あなたも同じだったのね…
なるほど。
犯人は、僕たち以外にも何人か連れてきているんだね。
あの足音はあなただったんだ。
私の聞いた足音もあなたたちだったんですね。
…いや、なんか違う。
え?
あなたの聞いた足音って、どんな足音でした?
スタッ…スタッ…っていう、走っているような足音でした。
その足音を聞いて、走り出したんですね。
はい。
…ということは…
…僕たちが聞いた足音は、先音さんではありません。
え!じゃあ、誰の足音なの!?
怖い…誰の足音だったの…
そうです。
あの足音は、先音さんでもなく、僕たちのものでもない。
どういうこと?
僕たちは、走ってくるような足音を聞いて、走り出しました。
あ…
どうしたの?
私たち全員「走ってくるような足音を聞いて、走った」。
でも、これって先にどちらかが走り出さないといけないんじゃない?
つまり?
僕たちの聞いた足音が先音さんのものだとしたら…
僕たちは「走ったような足音が聞こえたから」「走った」。
先音さんが走ったから、僕たちは走り出した。
…ということになります。
次に、先音さんの聞いた足音が僕たちのものだとしましょう。
先音さんも「走ったような足音が聞こえたから」「走った」
つまり、僕たちが走ったから、先音さんも走り出した。
…ということになります。
その通り。
なるほど!
つまり「走っている足音」は、私たちでも、先音さんでもなかったということね!
えっと、すみません。
私、よく分からなくて…
僕たちの話は矛盾しているんです。
僕たちの走る足音を先音さんが聞いたのなら、
僕たちは足音を聞かずに走ることになります。
逆に、先音さんの走る足音を僕たちが聞いたのなら、
先音さんは足音を聞かずに走っていることになります。
では、あの足音は…
他の誰か、でしょう…
お兄ちゃんだったらいいんだけど…
私たちをとらえた犯人だったら…
怖い…です…
とりあえず、逃げよう。
さっき、足音が聞こえたのは、先音さんが来た方だったよね。
じゃあ、逆方向に逃げようか。
そうだね、行こう。
タッタッタッ…
はぁはぁ…
あら?先音さん?
あれ?どこ?
姿が…見えない…
はぐれちゃったかしら…
スタッ…スタッ…!
…?
バコン!バコン!バコン!…
うっ!
ぎゃっ痛っ!
ああああっ
ふぅ…
頭のおかしい奴ら…
そのまま目覚めることなく眠ってなさい。
ダメじゃない。
いじめっ子は、いじめっ子らしく仲間を裏切らないと。
悠人を裏切って、出口に向かっていると思いきや、
悠人を助けようだなんて。
本当に分からない…。
あんな奴にまだ手を貸すんだ。
言いなりなんて、やめれば解放されるのに。
あなたたちに興味はないけど、
悠人を助けようとするから、こうなるのよ。
悠人は絶望するかしら…?
じゃあね、3人とも。
悠人の味方をするからいけないのよ。
先音は、3人を部屋に隠すと、フラフラと歩きだした。
あの人の部屋に…
残念。下っ端仲間さんは、あんたを裏切らなかった。
だから、終わらせてきちゃった。
絶望した?昔の私は、あんたと同じ状況にいたの。
立場逆転よ。
今度は、私が奴隷にする番。
私の奴隷…藤澤悠人。
…
僕は…
僕は…斉藤咲真です…
END2 脱出失敗
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!