第5話

Chapter 1
1,011
2019/06/02 09:02
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何もここで倒れてなくてもいいじゃん。
こんな所でお腹空かして倒れていても、誰も助けに来てくれないよ。
ってか、楽しみに取っておいたアメを食べられて、地味にショックなんだけど!!
今日1日、頑張った御褒美に食べようと思っていたイチゴ味のアメ。
疲れた時は糖分が欲しくなるから、その時ように取っておいたのに!
『 それ 、私が楽しみに取っておいたやつなんだけど! 』
カランコロンッと口の中でアメを転がしながら、悪びれた様子なんか一切見せない風磨くん。
風磨 「 あー 、そうなの? 」
『 そうだよ! 』
このあと、自分が言ったことに後悔するなんて、思ってもいなかった。
いきなり、風磨くんが顔をグッと近づけてきた。
『 っ?! 』
びっくりして、思わず足を後ろに下げようとしたのに、私の行動を先に読んでいたかのように、風磨くんの腕が腰に回ってきた。
『 も 、もう ⋯!近い ⋯ っ! 』
なんて危ない距離なんだろう。
少し顔を見上げてみれば、思った以上に風磨くんの顔が近くにあって、声が出なくなった。
抵抗して少しでも顔を動かせば、唇が当たってしまいそう ⋯ 。
風磨 「 ⋯ アメ 、食べる? 」
至近距離で喋られて、ふわっとイチゴの匂いがする。
『 た 、食べるって ⋯ もう風磨くんが食べちゃって ⋯ 』
風磨 「 うん 、だからあげよーか? 」
『 意味ワカンナイデス 』
き 、危険すぎる。
この状況に慌てる私に対して、風磨くんはむしろ、楽しんでいるようにしか見えない。
風磨 「 早くしないと、俺の口の中で溶けちゃうよ? 」
この変態は、まさか自分が食べているやつを、私に食べさせようとしているのか?!
『 い 、いるわけないでしょ! 』
風磨 「 食べたがってんのはそっちじゃん 」
『 勝手に食べたのはそっちでしょ! 』
風磨 「 うん 、だからあげるよ 」
急に声のトーンが低くなって。
甘い甘い、イチゴの匂いに包まれて。
風磨 「 少しだけ口開けて 」
そんな言葉が聞こえてきた時には、もう遅くて。
目の前の風磨くんの整った顔が、少しだけ傾いて、グッと唇に押し付けられた柔らかい感触。
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