第3話

Chapter 1
1,155
2019/05/30 05:30
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ねむそうに目を擦りながら、私の方を見た。
近くで改めて、しっかり顔を見て誰かわかった。
菊池風磨くん。
隣のクラスの、よくモテると噂を聞く男の子だ。
あまりに噂に興味のない私でも、この人の噂はよく耳にする。
女子達みんながキャーキャー騒ぐ有名人。
顔立ちはしっかり整っていて、ふわっとしたくらい茶色の髪。
鼻筋もしっかり通っている。
私みたいな凡人とは住む世界が違う。
私の容姿は、お世辞でも可愛いとは言えない。
肩につくくらいに伸ばした髪に、どこにでも居るような平凡な顔立ち。
唯一マシと言えるのは、お母さん譲りの肌の白さと、ぱっちりした二重の瞳。
瞳がぱっちりしているからと言っても、他が秀でているわけじゃないから、特別可愛い訳でもない。
“ 風磨くん ” って名前は知っていたけど、まさかこんな整った顔の持ち主だったとは。
こりゃモテるよなあ。
風磨 「 ⋯ なーに 、俺の顔になんかついてる? 」
『 っ! 』
いきなり顔を近づけられてびっくり。
すっかり、この整った顔に見とれてしまっていた。
首をかしげながら、ひょこっと私の顔を覗き込んできた風磨くん。
今なら、この顔立ちに騒ぐ女子達の気持ちが、少しはわかるかもしれない。
こんな整った顔のイケメンに見つめられたら、ドキドキしないわけがない。
動揺して、目線を外して、あからさまに距離を取るように立ち上がってしまった。
風磨 「 あれ ー 、逃げられちゃった 」
ふっと笑いながら、じーっと私を見ている風磨くん。
風磨 「 逃げないでこっちおいで? 」
『 な 、何言って ⋯ 』
ちょいちょいと手招きをして、私が近づいてくるのを、余裕な顔で待っている。
風磨くんの、この余裕な顔はなにか危険なものを感じる。
変なことでもされるんじゃないかって、自分の中の危険センサーが動いた。
警戒しながら、風磨くんを見ると。
風磨 「 だいじょーぶ 。変なことしないから 」
う 、胡散臭い ⋯ ! 怪しい !!
キリッと睨んでみると、風磨くんは不思議そうな顔をして、首をかしげて私に言った。
風磨 「 安心しなよ 。幼児体型には興味ないから 」
そのまま私の顔から目線を少し下に落として、私の体の一部をさしながら、悪気もなさそうにはっきりいった。
風磨 「 そんなまな板じゃ襲いたくもならない 」
『 ⋯⋯ 』
風磨 「 もっと大きかったら変なことしてたかもね 」
『 ⋯ は 、はあああ ?! 』
な 、なんなのこの人 !!
ほぼ初対面のくせに、人の体にケチ付けてくるとか何様なの ?!
すぐに自分の体を隠すように身を小さくした。
彼にも女の子に対して、こんな失礼な発言が堂々とできてしまうなんてありえない !!
風磨 「 だからさー 、そんな隠したりしなくても興味ないって 」
『 私だって 、好きでまな板になってるわけじゃないんだから ! 』
ちょっと待て 、自分。
返す言葉がこれっておかしくないか ?!
風磨 「 ⋯ ふっ 、そーなんだ? 」
は 、鼻で笑われた ⋯ 。
『 む 、胸の大きさなんて人それぞれなんだから! 』
ダメだ、むきになればなるほど、自爆していってる気がする。
風磨 「 うん 、そーだね 。でも俺は大きい方が好き 」
ほぼ初めて話す人と、なんでこんなこと話さなきゃいけないわけ ?!
意味わかんないんだけど !!
相手にしちゃダメだ !
こんな人、ほおって置いて早く図書委員の仕事をしよう。
私がその場を離れようとすれば。
風磨 「 だからー 、こっちおいでって言ってんじゃん 。言うこと聞けないの ? 」
ソファに座っていたのに、急に立ち上がって、無理矢理私の身体を引き寄せた。

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