『ゆうきちゃんのみみは、みぎのほうだけなら、きかいをつければきこえるんだ、でも、ひだりのみみは、しゅじゅつをしても、なおるかわからない…。』
手術…どんな感じなんだろう…わからないけど私の耳に目は治るかもしれないんだ…。
「その手術っていうのは私はできるの?」
『いま、きみのうしろに、きみのおかあさんと、おにいさんが、いるんだきいてみるよ』
え…お兄さん…?私にお兄さんがいるの…?
今話してるのかな…誰も話しかけてこない。
ぬいぐるみさんは?私、てっきりぬいぐるみさんが後ろにいるものだと…。
『ねぇ、ゆうき』
誰の手?初めて触れる手………。
この人が私のお母さん?
『あなたは…ふつうのおんなのこなの…?
いつも、じょうしから…
きんじょのひとから…あなたは…おかしなこどもなんだって。
ばかにされつづけて…
だからわたしは…わたしは…』
私の手のひらにポツリポツリと水滴が落ちてくる。
「お母さん、私はお母さんの子供だよ
他の子がどんな子なのかわからないけど、
笑えるし、嬉しいと思えるし、お腹もすく
普通の女の子だよ、お母さん」
『ごめんね……ごめんね…』
さっきよりも水滴が落ちてくる速さが速くなってる…。
泣いてるんだお母さんは。
「大丈夫だよ…私、寂しかっただけで怒ってはないからね…」
『しゅじゅつうけたい?』
「うん、お母さんの顔と声が聞きたいし、
ぬいぐるみさんにもお礼したいから
手術うけたい!」
『わかった、うけよっか』
「ねぇ、お母さん私お兄ちゃんとお話ししたい」
私のお兄ちゃん…どんな人かな?
見た目は私と似てるのかなぁ?
『ごめんね、おにいちゃんは
いまはなしたくないんだってまたこんどね』
「うん……わかった」
お話し…したかったなぁ…。
第14章へ続く
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。