第6話

〜七夕〜 昼神幸郎(Lv.3)
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2021/07/24 22:58


1人教室に残っている私は、窓の外の星空を眺める。




いつもなら、澄み切った夜空には満点の星が輝いていて、あぁ…長野に引っ越してきて良かったって思える瞬間。







……けど、今日は七夕だっていうのに、生憎の曇り空。さっきまで降っていた雨が止んだから、こうして窓を開けていられるものの、やっぱり今日ぐらいは星を見たかったな…と曇天を睨みつける。













昼神「……やっぱり、まだ居たんだ。」






教室の入口から、いつも私を抱きしめてくれる優しい声が聞こえる。



彼の声を聞くだけで、笑顔を見るだけで、長野に来て、彼に出逢えて良かったと思える。






昼神「昇降口行ったら、まだあなたの靴があったからさ。もしかしてと思って…」



ビンゴ、と言ってにこやかに笑いかけてくれるのは、彼氏の昼神幸郎。





あなた「……ほんとなら、部活終わったら誘おうと思ってたんだけど。」


がっかりした気分は晴れないままで、いつもより沈んだトーンになってしまうのも自分でよく分かる。




昼神「こんな天気だもんな…。今年は天の川見れなかったか、」



「…けど、それだけじゃないだろ?元気ない理由。」と、幸郎はそっと私を見る。







あなた「……私たち、離れ離れになっても大丈夫なのかな…?」




今日の曇天を見て思った。1ヶ月後に親の転勤でまた引っ越しをする私と幸郎を隔てるものは、これから先きっと多くなっていって…



それに、私が耐えられるのか不安で仕方なかった。







昼神「…ねぇ、知ってた?7月7日に降る雨って、催涙雨って呼ばれてて、会えないことへの悲しみから2人が雨を降らせてるんだって。」


…私はイマイチ幸郎の言いたいことが分からなかった。


そんな私の顔を見てクスッと笑うと、「だからね…」と言葉を続けた。




昼神「雨が降ったのは2人を隔てる障害になるためじゃなくて、2人の感情によって降らせてるってこと。」




昼神「あんなに離れてる織姫と彦星でも、隔てる物がないなら、俺たちだってきっと大丈夫だよ。」






幸郎の言葉は、今までのどのセリフよりもロマンチックで、


それをサラッと言ってしまう幸郎に、再度惚れる以外の私はどこにも居なくて。





あなた「……好き。やっぱり離れたくない…っ」




私は思わず我慢していた本音を零してしまった。





昼神「……おいで?」


幸郎が広げてくれるその大きな腕の中に、私は迷わず飛び込んだ。




幸郎は私の後頭部と腰に手を添えて、後頭部の方の手でゆっくり撫でる。






せめて…せめて今日だけでも、離れ離れになる前に、いっぱい幸郎を感じていたい…。




その想いが幸郎にも伝わったかのように、幸郎は少し微笑みながら「ねぇ、…キスしてもいい?」と聞いてきた。





あなた「私も……、幸郎といっぱいしたい。」



幸郎の腕の中だから、いつもよりも幸郎を見上げる角度が高くて、顎と目線をめいっぱいまで上げてそう言うと、



昼神「何それ、………もう止まんないよ?」




上がった顎にその大きな手を添えて、幸郎が身をかがみながらキスを降らせる。



何度も何度も優しいキスを落とし、まるで小雨を降らすかのように軽く、長い間それは続いた。





あなた「はぁっ……ん、っ、……ぁっ………///」




息が続かなくなって意識が朦朧としてくると、「苦しい?」と尋ね、私はその言葉に甘えて頷く。




昼神「……じゃあ、今度はこっち。」





そう囁く声が右耳にだんだん近づいてきて、ぞわわ…と全身が震えると、それに気づいた幸郎が余裕そうにフッと笑う。



その笑みの息遣いまでもが、私の耳を震わせて…



あなた「ひぅっ…ぁ、……………んんっ…、///」




私の右耳は縁の形を確かめるように甘噛みされ、甘い声が私の口から歯止めが効かなくなる。




そんな私の反応を楽しむかのように、今度は生温くて湿っぽいそれを私の耳に当て、ゆっくりと撫で始める。




あなた「さ、さち……ろっ…………、…ぅっ……///」






昼神「……もう、止めないからね。」




さっきまで、私に一つ一つ了承を得てからキスをしていた幸郎が、もう自分の思うがままに私の身体を弄ぶ。






また降り出した雨音が、開いた窓から教室内に響いて、その規則的な音をかき消すように、私たちの声が途切れ途切れに響く。











________7月7日は1年で最も甘い夜。














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