太我くんは私から離れて助手席の扉を開けた
紳士的だな
でも同時に、違和感を覚えていた
そういえば、前に太我くんに相談したな
嘘をついた
太我くんは少し悲しそうな顔をして
すぐに笑った
太我くんが指をさした先には
達也くんと2人で行ったご飯屋さんがあった
そっか、言ってたね
メンバーとも食べに行くって
大切な女の子…?
それは誰のこと?
ねえ、達也くん
期待してもいいの?
昔のことでも、いいの?
ご飯を食べてる間
最低だけど、太我くんの話には空返事で
ずっと達也くんのこと考えてた
そしたら、もう帰ろっかって
そう言った瞬間
太我くんが泣きそうな顔をして私の方を見てきた
太我くんに問い詰められる度に胸が苦しくて
内心、太我くんが私のことを救ってくれるかもしれない
そう思ってた
だけど
テーブルにお金を置いて私は走った
お店から30分ほどで家に着く
太我くんは止めに来なかった
来られない方がよかった
走ってる間ずっと考えてた
そういう関係ってなんだろう
どんな関係であれってなんだろう
達也くんとの関係ってなんなのかな
わからなくて
涙が止まらなかった
ヤってる時は確実に私に向けた好意なのに
終わった途端に私じゃない誰かに
彼女さんに向けられる好意
今までも何度も関係を絶とうとした
けど、達也くんからLINEが来ると
もういいや。好きだもん。
ってなって、なんでもよくなる
その好意が偽物でも
その時だけは私の達也くんだから
それでいいって思ってたのに
気づいたらそれじゃ収まらないくらい好きになってて
辛かった
やめたかった
太我くんの優しさに甘えたかった
なのに
ピンポーン
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。