ここ1週間程、炭治郎さん達と基礎的訓練をし、アオイさん達と機能回復訓練、水柱様に稽古をつけて頂いてるわけだが、
唯一成長を全く感じられないものがある。
『ビシャッ…………ポタッ、ポタッ、ポタッ…』
(うぅ…強いです、これまで一度も勝ててません…早すぎます…)
薬湯をかけられる前に反射的に閉じた目をゆっくりと開ける。
髪から滴る薬湯が独特な匂いを放っている。
平たい茶色の机、並べられた薬湯入りの湯のみ達。
もう既に何度も私が被った薬湯のせいで、私の前には水溜まりが出来ている。
私の向かい側には、微笑みを薄ら浮かべる彼女の姿がある。
私は初めてお会いした時から、
その綺麗な容姿、
凛とした紫色の瞳、
全てを見透かしている様な佇まいにすっかり虜になっていた。
気がつけば、思わず見蕩れてしまっていた、
なんて事は、彼女が遠方の任務から帰ってきてからはほぼ常にその状態だと言っても過言ではない。
普段の様子を見ていても、あまり話さない様だ。
それに、私がしのぶさんから彼女を紹介された初見の場で唯一会話を交えたのも、
『先日、お話した私の継子です。』
『は、初めまして、つ、月夜里 あなたです。ここ暫く蝶屋敷でお世話になっている者です。どどどうぞ、よ、宜しくお願いしますっ。』
『緊張しすぎですよ、あなたさん。』
『す、すみませんっ(汗)』
『では、カナヲも挨拶して下さい。』
『栗花落 カナヲです。宜しく。』
これだけだった。
視界の横から突然表れる、なほさん。
心配の色が諸に顔に出ているのを私は慌てて反応する。
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夜、炭治郎さんの部屋を訪ねた私はカナヲさんの話をした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。