第58話

水柱様の元へ
21,469
2019/09/22 00:49
『ゴクッ…』

しのぶさんに限った事ではないが、触れたくない、聞きたくない話題が多すぎる。

私はしのぶさんの顔を見れず、渡された紙袋に視線を落とす。
胡蝶 しのぶ
正式な処分は近日予定されている、柱全員と御館様とで開かれる柱合会議の前に決められます。
あなた

胡蝶 しのぶ
それまでは蝶屋敷であなたさんの身を預かる事になったので、逃げたりしないように。
あなた

…はい。

胡蝶 しのぶ
あなた

突然しのぶさんから声が聞こえなくなったので、私は不思議に思い、ゆっくり顔を上げた。
胡蝶 しのぶ
あなた

(こ、怖いです…ニコニコしてますが、これは怒ってます…確実に、怒ってます…!)
胡蝶 しのぶ
本当はこのまま安静にして欲しいのですが…どうやらそうもいかないみたいで…
あなた

は、はい…?

胡蝶 しのぶ
目が覚めたら冨岡さんの元へくる様に言付かっています。
あなた

…わ、分かりました。

胡蝶 しのぶ
もし何かあっても、少しでも無茶する事は無いように。良いですね?
あなた

は、はい…





アオイさんから衣服を借りると、すぐさま袖に手を通す。
丈の長い袴を永らく着ていなかったからか、妙な違和感を感じた。


水柱様が居るという場所に来てみたはいいものの、そこに水柱様の姿は無かった。


(ま、間違えたのでしょうか…)


更に、そこは男ばかりの道場ときた。

玄関口の門を通り、それとなく庭の方へ目が行く。
そこには傷だらけ隊士が休んでいた。
鬼殺隊士
鬼殺隊士
あなた

ほんの少しの間、対面した私達の間で沈黙の時間が流れた。
私を見て、呆然とする稽古中の鬼殺隊士の方々に私は頭を勢いよく下げた。
あなた

ごっ、ごめんなさい!間違えたみたいですっ!

鬼殺隊士
だ、誰だ…見ない顔だよな…
鬼殺隊士
あんな…その綺麗な女の子、鬼殺隊に居たっけ…?
鬼殺隊士
さぁな…おい、誰か話し掛けに行けよ…
鬼殺隊士
あの様子だと、ここに鍛錬しに来たんじゃなさそうだぞ…教えてやらないと…
あなた

明らかに反応がおかしい。
私を見る好奇心に満ちた目の中に、不安や心配の色が見える目がチラホラある。


(…な、何でしょう、嫌な予感がします。)
ア"ァァァァァア"ア"!!(汚い高音) 
後方から身に覚えのある汚い高音が私の耳に飛び込んできた。
本能に身を任せて振り返ると、私を指さし、ガクガクと震える善逸さんが居た。
あなた

善逸さん!

我妻 善逸
な、なんでこんな所居んの、あなたちゃん?!死ぬって!早くここ出ないと!!!
あなた

えっ、待っ

どうしたんだ、善逸?いきなり走り出したりして…って、あなたさん?!
あなた

炭治郎さん!

私の背を強く押し、屋敷の外へと促す善逸さん。
その影から炭治郎さんの姿を見つけた。

プリ小説オーディオドラマ