第174話

現役 お転婆少女
8,300
2020/10/13 18:00
部下
ですから…、貴方様には日比谷家の屋敷に来て頂く必要がございます。
柊生様が大変な時こそ許嫁として、いえ妻としての義務をお果たし下さい。
あなた

部下

彼らの言う『義務』、それは私に結ばれた約束であり、私を縛るには十分すぎる内容のものだ。


勿論、幼少期の頃から目をかけて頂いた恩だってある。

それに祖父だって私の先を思って結んだ約束だという事は分かっていた。


(それでも…私には、)





──────『この刀の持ち主を探し出す』という目的がある。


あなた


『スゥ…』

長い沈黙をいざ破らんと大きく、静かに息を吸った私は彼らの顔へと目線を上げた。




あなた

お断りします。






雲越しに漏れ落ちた月光がゆっくりと私の顔を微かに照らし出す。
部下
…成程、分かりました。どこまでも義理堅かった月夜里家 先代当主の面影はお孫様には一つも無いのですね。
あなた

祖父のその話は今は関係無いでしょう。それに私はもう月夜里家との縁は絶ちました。

部下
貴方様は本気で月夜里家の血の柵から無縁になれるとお思いで?
あなた

部下
貴方様がここまで頑固だとは知りませんでした。少し手荒くはなりますが、
あなた

っ…

部下
ご容赦願いましょう。

『ギュムッ』

黒い革手袋を改めてはめ直した2人の部下は私を睨みつける。


依然として力が発揮出来る程の月明かりは私には届かず、

私は腰に刺した刀の持ち手に手を乗せた。
あなた

…良いでしょう。



『カチャッ』

あなた

あなた方が目的の為に私の意思を踏み躙るというのなら、私も自身の目的の為にここで邪魔者を斬り捨てます。


片足を後ろに一歩分下げると、左親指で鍔を押し上げる音が今宵の静寂の夜の空気に響いた。


『スラッ…』

徐々に顔を出し始めた真っ黒な刃に2人の部下はフンッと鼻で笑った。
部下
おやおや、お転婆はもう卒業されたと聞いていたのですがね。
あなた

いえ、まさか。




私は目を伏せ、そして不敵に笑ってみせた。


あなた

現役ですよ。





『ダダッ!』

目の前の男の一人が突如私の懐へと飛び込んで来た。
あなた

?!

咄嗟に交わしたものの、2度目の攻撃は流石に避けきれなかった。
あなた

っくは!


ドスンと重い拳が与えた痛みが私の横腹を内臓ごと突き抜ける。


(早すぎて見えませんでしたっ…!)

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