(伊之助より先に…?)
最終戦別、鬼狩りになる為に通らなければならない、狭き門。
藤襲山という山の中で、放された沢山の鬼がいる中で七日七晩を生き延びなければならない。
今期も俺と同じぐらいの多くの子どもが挑んだが、生き延びたのはたった数人だった。
(伊之助が1番じゃなかったのか…?)
けど、昨夜の刀を振る姿を思い出すと、納得出来る。
上手く身体の特徴や刀の性質を使い、一瞬で鬼を駆逐した。
俺は本能で分かった。
あなたさんは強い、と。
俺がもっと驚いたのは…あなたさんだ。
艶やかな黒髪に白い肌。
優しさが滲むような奥二重の目と、桜のような唇が印象的だ。
瞳は少し茶色っぽくて、化粧をしているわけではないのに何処か大人っぽさが感じられる。
けど、笑うと一気に幼くなるのだ。
こんなに綺麗な人を見たのは、普段顔を合わせる人間以外で久しいかもしれない。
(きっと皆が黙り込んでしまうのは、)
俺も初めて見た時、あなたさんの顔を見て言葉が出なかった。
(本当に綺麗だからだ。)
(善逸が見たら、またうるさくあなたさんに求婚を迫るぞ。)
本人の声でぼんやり考えていた意識から、現実に引き戻される。
けど、目の前には誰も居ない。
伊之助の声がしたので、走って行くと、火を消して、土鍋を前にするあなたさんが居た。
(しまった、放置してた!)
あなたさんは振り返るとにっこり笑う。
湯気にかかりながらも、また無邪気に笑う。
『かぐや姫』と呼ばれるのが充分なぐらい、誰かの心を揺すぶれる美しさがあった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。