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私は眉を少し下げて聞いてきた義勇さんに頭をブンブンと振って答えた。
(ここまで男の人に免疫が無いとは…思ってもみませんでした…)
下の名前を呼ぶだけでも苦労しているのは、何も『義勇』さんだけではない。
『炭治郎』…も、そうだ。
何故か固定していた呼び名から進化しようとすると、顔が熱くなり、謎の恥ずかしさが湧き出てくる。
更に口はもごもごとしか動かなくなるし、
最初の一文字目で何度も躓く。
(ぎ、義勇さんにまた気を使わせてしまいました…っ(汗)")
脳内で何度も迷って行き着いた答えは「分かりました。」の一択だった。
返答の言葉がすぐに「ごめんなさい」と「すみません」に絞られるとは、
気づいた途端に情けなくなるものだ。
(すぐに謝る癖…既に付いてしまっている気がします…)
小さく息を吐くと、
『ドンッ』
と腰から下に大きなものがぶつかった衝撃が突如私を襲った。
ちょうど人混みから逃れた場所だったので、
勢いのついたものがぶつかった瞬間、私は尻もちをついた。
(きょ、今日はやたらとぶつかってしまいますね…ぼうっとしすぎでしょうか?)
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!