第33話

月光に左右されて
25,762
2019/09/03 14:09
しかし、この山には日向が無いに等しい。

更には雨雲で山全体が雲の影に覆われている様なものだ。
匂いを辿り、予測して、刀を振るしかない。


(まずは…後方右!)


私はしゃがんだ瞬間、低い姿勢のまま軸足に軽く力をいれ、回転した速さに刀を乗せて振る。

『シュンッ』
っ!
あなた

当たりですね。

風を切る音と同時に、後方右からの鬼の匂いが消えた。
あなた

成程です、後は待つだけですね。

待つ?んふふっ、食われるのをかい?んふっ、
すると、いきなり地中から匂いが分散した。


(うーん、やはり血気術を使う鬼…厄介です…)


その甘い匂いが私の周りに漂っている。
私をどうやら分裂し、増えた鬼が私を囲っているらしい。

どう足掻いても逃れる事は出来なさそうだ。

ふと空を見上げると、雨雲の隙間から月が少し顔を出そうとしていた。


私はすぐさま刀の先を地に向ける。
あなた

全集中、菓子の呼吸、

月の光が少しずつ刀に当たるにつれ、当たった刃の先からどんどん透けていく。
あなた

肆ノ型、

雨雲の隙間から一瞬だけ月の顔全てが見えた瞬間、私は地に透明と化した刃を突き刺す。
あなた

小豆拍子!

『ドンッ』

地面から大きな振動と共に音が鳴り響き、分裂していた鬼が一気に地上に現れる
ぐはっ、
割れた地面の上にごろごろと転がる鬼の分身の影に、一体だけ口元の血を拭う鬼を見つけた。


(あの鬼が本体ですね、!)


私はその鬼一直線に蹴り出すと、透明の刃で切り落とそうと、鬼の首へと目掛けた。

今にも切り落とせそうな距離だ。
刃が首へと進んでいく。


が、一瞬でそれは難しくなる。
あなた

っ!

(刃が…時間切れですっ…)
んふふっ、
鬼が横へと勢いよく振る長い爪に危機一髪で、後ろに1歩戻り、もう一本の腕の爪が振り下ろされるのをしゃがんで避ける。
んふっ、
あなた

っ!!

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