第40話

憧れ
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2019/09/17 20:05
竈門 炭治郎
あなたさんと、もっとゆっくり話がしてみたかったんだ。
あなた

わ、私と…ですか?

竈門 炭治郎
うん。俺はあなたさんが噂通りの我儘で野蛮で悪さばかりする『かぐや姫』ではないのは分かったけど、まだまだ知らない事が沢山ある。それを知っていきたいんだ。
あなた

わ、たしは…炭治郎さんや善逸さん、伊之助さんの様な素敵な人じゃありません。中身なんてすっからかんで…

炭治郎さんは私の言葉を聞いて、「そんな事無いよ。」と優しく否定してくれた。
我妻 善逸
もうコイツらは駄目だ!あなたちゃん、好きな所選んでいいよ?!俺が全部退かすから!
嘴平 伊之助
勝手に何言ってんだ!俺の隣じゃないなら端はやらねぇ!
竈門 炭治郎
良かった、伊之助はあなたさんと仲良くなったんだな。
嘴平 伊之助
別に仲良くねーし!
竈門 炭治郎
そうなのか?!
我妻 善逸
ささっ、あなたちゃん選んじゃって!ムフフフフ…
あなた

は、はい…





夜中になるにつれて、町は静かになり、虫の鳴く声だけが外から聞こえる。
部屋の2枚の端の布団の近くには、両端に1つずつ灯りが置いてあった。
嘴平 伊之助
おい、付喪神。
あなた

つ、月夜里です…

嘴平 伊之助
本当に端じゃなくていいんだな?後から代われって言っても代わってやんねーからな?!
あなた

だ、大丈夫です…私も炭治郎さんと隣が良かったですし…

竈門 炭治郎
ありがとう。実は、俺があんな事を言ったから、無理矢理真ん中に来てくれたのかと…
あなた

いえ、そんな!私、炭治郎さんが私とお話したいと言って下さって、本当に嬉しかったんです。

我妻 善逸
…何これ、俺だけあなたちゃんと離れてんじゃん。いいか、次は俺の番だからな!
竈門 炭治郎
分かってるよ、善逸。
ゆらゆらと揺れる橙の灯りと、4人で寝るには少し狭い部屋。
我妻 善逸
あー、今日も死ぬかと思った。鬼怖すぎ。いや、本気で。
嘴平 伊之助
テメェはいつもうっせぇんだよ!メソメソ、泣きやがって!
我妻 善逸
しょうがないだろ。誰もが皆、お前みたいに鬼を前にして、『腹がなるぜ』とか言わないんだからさ。ちなみに『腕がなる』ね、正しくは!
嘴平 伊之助
んなもん、どーだっていいんだよ!
竈門 炭治郎
伊之助、善逸、夜中にうるさいぞ。
天井をぼんやりと揃って眺める自分達を見て、私は幸せのあまり、思わず笑ってしまった。
あなた

くふふふふっ…

嘴平 伊之助
お前、何笑ってんだ?
布団を大きく頭まで被って笑ったつもりだったのだが、それはあまり効果が無かったらしい。
あなた

え、いや、その…

布団から顔を出し、少し言うのを躊躇う。
けど、善逸さんも炭治郎さんも不思議そうな顔をしているので言ってみる事にした。
あなた

憧れだったんです。こういう風に家族以外の人とお喋りしながら寝る事。

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