第135話

『義勇』で良い
13,235
2020/02/03 00:31

『いえ、何でもないです。軽率な事を私は…すみません、辛くない訳ないですよね。』



(本当に鬼殺隊の皆さんは…私の周りの方々は…)



誰かを思いやり、

厳しさの中にも優しさが、温もりがある。
あなた

た、確かに私も何か話さなければ、と、水柱様が私と居るのが気まずくないか、と考えていました。


(なんて優しい方々なんでしょうね…私は出会いに本当に恵まれています。)

あなた

でも、

普通なら、

連日の間に稽古をつけて頂いたにも関わらず、これだけの無言の時間が過ぎていくという事は、

嫌われているという考えも有り得る。


(でも、それが無かったのは…きっと、水柱様からする甘い匂いがするからなのでしょうね…)



水の様に流れる感じの甘い匂い。


体の周りに留まることを知らず、

いつも新鮮な様な、そして清々しい様な…仄かに香る、水飴の様な匂い。
あなた

お互いにそう思っている事が分かって良かったです。私はもっと水柱様と色々なお話がしてみたいですっ!

冨岡 義勇
黙って目をぱちくりさせる水柱様に、私は今自分が口にした事が可笑しいのかも知れないと気づく。
あなた

…えっと、すみません…、私なんかが水柱様と色々な話がしたいなど申し上げてしまって…すみません…

冨岡 義勇
…俺は胡蝶や炭治郎達の様に、明るく話も出来なければ、楽しい話も出来ないぞ。
あなた

はい!

冨岡 義勇
俺の話を聞いていて、面白いとは思わないと思うぞ。
あなた

それでも良いです!私が水柱様と沢山お話がしたいだけなので、大丈夫です!

私は隣で歩く水柱様の顔をじっと見つめていると、水柱様はフイッと前を向いた。
冨岡 義勇
…『義勇』で良い。
あなた

え?

冨岡 義勇
水柱様』ではなく、『義勇』でいい。その方が互いに話しやすいだろう。
あなた

なっ…そ、それはあまりにも、唐突というか…

冨岡 義勇
何故だ、炭治郎は俺の事を『義勇さん』と呼ぶぞ。
あなた

そ、それはお二人に何かしらの縁があるからでしょうし…私が水柱様をお名前で呼ばせて頂くなど…


そう、炭治郎さんと水柱様を見ていれば、その間に何かあるのが分かる。


炭治郎さんは水柱・冨岡義勇を心から尊敬し、

水柱様は炭治郎と禰豆子さんをとても大事にしているのが分かる。


それはきっと、私が知らない何かが間にあるからだ。


善悪は付けられない彼らの間のもの。

それと同等のものは私と水柱様の間には無い。



(私は…この数日間を何かのご縁だと思っていますけど…)


鬼殺隊の幹部として上に立つ者は沢山の出会いと別れを繰り返すに違いない。


私など、水柱様には只の部下に過ぎない。


(それでも…嬉しいですけどね。)




でも、きっとそう思っているのは、









私だけ。

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