『いえ、何でもないです。軽率な事を私は…すみません、辛くない訳ないですよね。』
(本当に鬼殺隊の皆さんは…私の周りの方々は…)
誰かを思いやり、
厳しさの中にも優しさが、温もりがある。
(なんて優しい方々なんでしょうね…私は出会いに本当に恵まれています。)
普通なら、
連日の間に稽古をつけて頂いたにも関わらず、これだけの無言の時間が過ぎていくという事は、
嫌われているという考えも有り得る。
(でも、それが無かったのは…きっと、水柱様からする甘い匂いがするからなのでしょうね…)
水の様に流れる感じの甘い匂い。
体の周りに留まることを知らず、
いつも新鮮な様な、そして清々しい様な…仄かに香る、水飴の様な匂い。
黙って目をぱちくりさせる水柱様に、私は今自分が口にした事が可笑しいのかも知れないと気づく。
私は隣で歩く水柱様の顔をじっと見つめていると、水柱様はフイッと前を向いた。
そう、炭治郎さんと水柱様を見ていれば、その間に何かあるのが分かる。
炭治郎さんは水柱・冨岡義勇を心から尊敬し、
水柱様は炭治郎と禰豆子さんをとても大事にしているのが分かる。
それはきっと、私が知らない何かが間にあるからだ。
善悪は付けられない彼らの間のもの。
それと同等のものは私と水柱様の間には無い。
(私は…この数日間を何かのご縁だと思っていますけど…)
鬼殺隊の幹部として上に立つ者は沢山の出会いと別れを繰り返すに違いない。
私など、水柱様には只の部下に過ぎない。
(それでも…嬉しいですけどね。)
でも、きっとそう思っているのは、
私だけ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!