そんな事を考えているうちに、アオイさんはあっという間に私の手足の手当を終える。
アオイさんに言われた通り、背を向ける。
すると、アオイさんは一度止まって、それから消毒に入った。
背中に消毒液が浸み込んだ綿が、ポンポンと軽く押し当てられる。
傷口をジリジリとなぞられている様な、もっと簡単に言えば刺す様な痛みが走る。
『お前の呼吸が持つ、全ての型の技を俺に向けてみろ。』
『?!』
水柱様の唐突なこの言葉に、私は何を言ったのか理解出来なかった。
『…』
『で、では…』
混乱しつつも、漸く全ての技を披露出来た訳だが、水柱様は容易く私の技をあしらう。
直ぐに技の太刀筋や回転、軸足の取り方等の大雑把な矯正に入った。
いつもの通り、刀の握り方から正しい構え、基礎的・初歩的な、私にとっては新しい知識を授けて貰った。
(分かってはいましたが、全く歯がたたなかったです…風柱様もそうでしたが、きっと蜜璃さんもしのぶさんも…)
私は水柱様を通して、改めて “ 柱 ” の圧倒的な強さ、技術力を目の当たりにした。
(もっと、もっと強くならないと、です…)
アオイさんはふと、何を思ったのか、手当をする手を止めた。
私の朝は夜も開けないうちに始まる。
まずはしのぶさんに頼まれたお萩を作り、
それから炭治郎さん達と山での走り込み、
体を改造すべく様々な運動をみっちり行う。
朝食後はアオイさん達との機能回復訓練。
午後からは夕方まで水柱様と稽古をする。
行程の合間合間に、蝶屋敷での炊事洗濯も手伝う。
(今、思い返してみると…かなり過酷な一日を送っていますね…)
多分、私が一日にこなしている事について、アオイさんが気に掛けていると、私は気づいた。
でも、先ほどのアオイさんの質問にふと首を傾げる。
(辛い…?)
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!