第139話

祭りの話
12,478
2020/02/15 23:54
少し困ってしまったが、一瞬見せるだけでいいなら、
いや、そもそもお面を外さず挨拶をしたのが悪い。

外した後、すぐに付け直せばいい。


それに…




(三郎さんを今離す訳にはいかない理由が出来てしまいました。)
冨岡 義勇
月夜里、気にするな、他を当たればいい。嫌な事はしなくたって別に構わない。
三郎
なっ、?!だからぁ、皆忙しいからお前らなんて相手に
あなた

……っ、分かりました。

冨岡 義勇
?!
三郎
分かりゃ良いんだよ、分かりゃ!
『スルスルスル…』

私は面の結び目を解き、狐の反面を取った。
三郎
っ…////
冨岡 義勇
あなた

期待する程のもので無くて、ごめんなさい。


(やはりこの反応ですね。どなたも同じ反応をするのが少し不思議に思えます。)


私は少しだけ表情に苦笑いを混ぜて、顔を傾けた。
あなた

さて、三郎さん、

そして、私はお面を外したまま三郎さんの両手を取り、ずずいっと顔を近づける。
三郎
…っ?!?!//////
冨岡 義勇
……
あなた

お祭りのお話、聞かせて下さいな。









今宵は30年に1度の伝統ある最も大きなお祭りが、この村で行われるらしい。

村の豊作と安泰を願い、土地神様に叶えて貰う為に供え物をしたり、舞を踊ったりするという。
三郎
でもよ、一番の醍醐味は…『祭り時に契りを結んだ者は幸せになれる』っつー噂があんだ。
あなた

契り、ですか?

冨岡 義勇
それは男女の間の契りという事か?
三郎
そうだよ、あんちゃん!でも、こんなのもある。



『もし、齢十を過ぎた男が一人いた場合、』
あなた

三郎
『村の女が一人、攫われる。』ってな!
冨岡 義勇
三郎さんが言うには、その口承が祭りの中には強く根付いている様だ。

だから、どちらかと言えば、舞や供え物はともかく、祝言や婚礼の儀を進めるのに忙しいのだ、と言う。
あなた

成程です。その噂は本当なのですか?

三郎
さぁな、俺はまだ三十年も生きてねぇもん!でも、村の皆が凄い意識してるのは確かだと思う。
あなた

そうですか…お話して下さり、有難う御座いました。

三郎
おう!じゃぁな、あなた!
あなた

はい!またお会いしましょうね!

三郎
お前、すげぇ美人だから面なんか付けんな!勿体ねぇぞ!
三郎さんは向こう側に走って行くと、振り向いて大きく手を振った。

私も手を振り返す。
あなた

とても元気な男の子でしたね。

冨岡 義勇
そうだな。月夜里が子どもを相手するのが上手くて助かった。
あなた

い、いえ!今回は三郎さんがお優しかっただけで、私は何も…

冨岡 義勇
(あれは優しかったのか…?)
あなた

でも、強いて言うのであれば、

私は解いた紐が垂れ下がるお面を両手で優しく持ちながら、義勇さんの方に顔を向けた。
あなた

似ていたから、なのかも知れませんね。

冨岡 義勇
…?
あなた

あ、えっと…ぎ、義勇さんが私を追って訪れた小さな町をまだ覚えていらっしゃいますか?

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